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*『僕だけに、出来ること』の続きです。
*若干スザルル要素有り。
変ワリユク心
とあるホテルのツイン。
シャワーを浴びてから、ルルーシュはドライヤーで髪を乾かしていた。
ドライヤーのスイッチをオフにすると、ロロがシャワーを浴びる音が聞こえ始める。
ルルーシュはバスローブ姿のまま、ベッドに仰向けで体を横たわらせた。
俺は何をしていたんだろうな、と、先程までロロの腕の中で散々泣いたのを思い出しながら、ルルーシュは自嘲気味に口元を歪める。
(相手はナナリーのいるべき場所で平気な顔をして笑っていた偽者だ。 なのに、何故、俺は)
ぎり、と歯噛みしながらも、これ以上考えると、たどり着きたくない答えに行き着いてしまいそうだった。
溜まっていた思いを言葉にして吐き出して、すっきりしたのは事実だ。だがその言葉を受け止めたのは、ロロ。
全身が総毛立つ。
使い捨ててやる、と憎み、その為に今まで兄の演技をして見せ、騙してきた相手。そんな相手に弱みをぶちまけたという事実。
(俺は、どうして、こうなんだ? )
ルルーシュは上半身を起き上がらせて、自分の身体を抱きしめた。
ルルーシュに銃口を向け、あまりの怒りで手が震え、照準すら定められなかったスザクの姿がフラッシュバックする。ルルーシュを捕らえ、拘束し、躊躇うことなく皇帝に売りとばしたスザク。
スザクは、敵だ。もう二度と元の関係に戻ることはない。そうわかっていながら、いざスザクに頭を鷲みにされ、床に押し付けられた時、ルルーシュは深く傷ついた。
その鋭い痛みが、この後に及んでも、スザクへの愛情が消えていなかったという証なのだ、とようやくわかった時には、スザクに目をこじ開けられて、記憶をかき回す赤い光を直視させられていた。
記憶に手が加えられるその直前に、自分に誓った筈だった。
ナナリー以外、誰も愛しはしないと。
少なくとも、こんな結末を迎えるような、そんな相手に二度と好意は抱かないと。
(それなのに。どうして、俺はまた、繰り返しているんだ? )
ロロが憎い。憎しみを体内に押さえつけておくのがやっとだ。だがそれは、ロロ自身が憎いというよりも、ロロに対して持ってはいけない感情を持ち始めている自分への憎悪の反動だった。
『大丈夫。僕は、ここにいるよ』
そう言われて、泣き出してしまった不覚。その不覚の原因こそが、今育ち始めている感情の正体だ。自分の内にある想いに気づきながらも、ルルーシュは、スザクを思い出せ、と自分を叱咤する。
スザクがただの友人だったら。スザクがただの敵だったら。皇帝の前で這い蹲らされても、魂が引き裂かれる音を自分は聞かずにすんだ。裂かれ、奪われた半身は未だ戻らない。
その状況を招いたのは自分自身だとわかっているからこそ、なお性質が悪い。相手への憎しみは、そのまま自分への嫌悪となって跳ね返ってくる。
(もう二度と、あんな思いをしてたまるか!!!)
更に、ずたずたにされた自分にはナナリーへの愛情しか残されておらず、それすらも一度は偽の記憶のよって奪われていた事実が、ロロへの憎しみを加速させていた。
引き裂く側に回ることはあっても、もう二度と、自分は引き裂かれる側にまわらない。
だから、生まれつつあるこの想いがこれ以上成長する前に、この手で握り潰さなければ。
思い出せ、と自らに説く。ロロを篭絡するのは自分であって、自分がされてどうする。ロロから搾り取れるものは全て搾り取り、その後でロロは闇に葬り去る。その為に今まで演技をしてきたのではないか。ナナリーのいない隙間に、またしてもロロが入り込もうとした事実に、自分はもっと怒りを感じるべきだったのだ。
ロロの前での失態は、自分が極限まで追い詰められたから。
ロロが自分にとって、特別な存在になっているからではない。
呪文のように、ルルーシュは自分にそう言い聞かせる。
「…兄さん、大丈夫?」
気付けば、ロロはシャワーを終え、心配そうにルルーシュの顔を覗き込んでいた。ルルーシュは顔を上げる。
「ああ、なんでもない」
「…そう?」
ロロは納得したようではなかったが、それ以上は何も言わず、自分用のベッドに座る。
一体、ルルーシュが泣いていた時、ロロはどんな思いでいたのだろうと思う。何か先程のことについて一言言うべきだろうか、と思いながらも、ロロの濡れた髪を見て、
「ドライヤー、使わなくていいのか」
ルルーシュは訊いた。
「んー…、すぐ乾くからいい…」
疲れているのか、返事が鈍い。
ロロがタオルで髪を拭き始めると、はらりと、バスローブの袖がめくれて、左腕に巻かれたベルトにナイフが二本、取りけられているのが見えた。
「…それ、いつもつけてるのか」
「…これ?」
ロロがナイフに少しだけ視線をやると、ルルーシュは頷く。
「うん。つけてないと、落ち着かないから」
ロロはタオルを頭の上に乗せたまま、ナイフを抜いた。無駄のない流れるような動作に、ロロがナイフを使い慣れているのがわかる。どうしても使い勝手のいいギアス能力にばかり目が行ってしまうが、ロロは紛れもないプロの暗殺者だ。一つ間違えれば、ロロの持つナイフで、自分の首に赤い線が描かれていたかもしれない。
「体洗う時ぐらいかな、外すのは」
ロロは抜いたナイフを見つめてから、指先でくるりとナイフを反転させ、素早くナイフを元の場所に収める。
「でも、駄目だよ」
ロロは頭の上に乗せていたタオルをたたんでから、顔をゆっくりと上げながら言った。
「…何がだ?」
「シャワーを浴びている時でも、ナイフは持ってる。僕は殺せない」
ロロはルルーシュを底冷えするような瞳で、真っ直ぐ見据えて言った。
答えを間違えるな。
ルルーシュの頭脳がすぐに正しい反応を導き出す。
「ははっ…。あははっ! 笑えない冗談、言うなよ。…笑ったけど」
ルルーシュの反応を見て、ロロは目元を緩ませる。
「…そうだね」
目を伏せたロロを見て、ルルーシュは今だ、と思った。
「ロロ…その、さっきは、悪かったな。色々と」
「気にしないで…僕は、兄さんが今までしてくれことを、しただけだから」
ロロが柔らかい微笑みを顔に浮かべる。
『僕だけは兄さんの傍にいる。何処にも、いかない』
ロロの微笑を見て優しく響いた言葉を思い出し、思わず癒されそうになった自分に、ルルーシュはこの馬鹿が! と己に激怒した。
(馬鹿が。もう二度と、俺は)
「だって兄弟…だから」
自信がなさそうに言ったロロの言葉で、ルルーシュは、家族はいない、とロロが淡々と語っていた映像を思い出す。
(そうだ、ロロを篭絡するのは俺だ。俺は篭絡される側じゃない!!)
ルルーシュは、ふ、と笑って、立ち上がると、ロロの隣に座った。
「不安なのか、ロロ」
「…そりゃあ、ね」
ロロに言葉をぶつけた時。ロロに、自分では孤独を埋められないのだろう、と問われて、ルルーシュは沈黙をもって肯定した。ルルーシュの傍以外、帰る所がないロロにとっては当然不安にもなるだろう。先程「僕は殺せない」と言ってきたのも、不安の表れに他ならない。
ルルーシュは、ロロを安心させるように、肩に手をまわした。
(ロロを攻略する為だ)
ルルーシュが自分に言い聞かせると、
「…ねぇ、兄さん?」
ロロはルルーシュに身体を預けて、口を開く。
「うん?」
「僕を慰めて…」
ルル-シュはごくりと生唾を飲み込んだ。
ロロを見降ろせば、とろりとした瞳がルル-シュを見上げている。
慰める、の言葉の意味。
普段のロロが使うなら、頭を撫でてほしいだとか、そういう意味になる が、先程自分がロロの胸倉を掴んで浴びせた言葉考えるなら、艶めいた意味で使っていると考えた方がいい。
どう答える。
どう、答える。
正しいと思える答えを導き出せず、ルルーシュが答えられずにいると、
「兄さん…時間切れ」
ロロは悪戯っぽく笑った。
「え」
「まだ駄目だってことがわかっただけ、収穫かな」
そう言うとロロは、ルルーシュの腕からすり抜けて、疲れたから寝るよと、と言ってルルーシュに背を向けて横になってしまう。
ルルーシュが面食らったような表情をした後、ロロに気づかれないように安堵の息をもらそうとした時、
「兄さん、今の、どういう意味だと思った?」
ロロはくるりと振り返り、言った。
その顔に浮かんだ満面の笑みに、ルルーシュが必死に叩き潰そうとしている想いに、ロロはひょっとして気がついてるんじゃないか、とルルーシュは思った。
終
戻る
お互いに篭絡合戦やってる兄弟。
*若干スザルル要素有り。
変ワリユク心
とあるホテルのツイン。
シャワーを浴びてから、ルルーシュはドライヤーで髪を乾かしていた。
ドライヤーのスイッチをオフにすると、ロロがシャワーを浴びる音が聞こえ始める。
ルルーシュはバスローブ姿のまま、ベッドに仰向けで体を横たわらせた。
俺は何をしていたんだろうな、と、先程までロロの腕の中で散々泣いたのを思い出しながら、ルルーシュは自嘲気味に口元を歪める。
(相手はナナリーのいるべき場所で平気な顔をして笑っていた偽者だ。 なのに、何故、俺は)
ぎり、と歯噛みしながらも、これ以上考えると、たどり着きたくない答えに行き着いてしまいそうだった。
溜まっていた思いを言葉にして吐き出して、すっきりしたのは事実だ。だがその言葉を受け止めたのは、ロロ。
全身が総毛立つ。
使い捨ててやる、と憎み、その為に今まで兄の演技をして見せ、騙してきた相手。そんな相手に弱みをぶちまけたという事実。
(俺は、どうして、こうなんだ? )
ルルーシュは上半身を起き上がらせて、自分の身体を抱きしめた。
ルルーシュに銃口を向け、あまりの怒りで手が震え、照準すら定められなかったスザクの姿がフラッシュバックする。ルルーシュを捕らえ、拘束し、躊躇うことなく皇帝に売りとばしたスザク。
スザクは、敵だ。もう二度と元の関係に戻ることはない。そうわかっていながら、いざスザクに頭を鷲みにされ、床に押し付けられた時、ルルーシュは深く傷ついた。
その鋭い痛みが、この後に及んでも、スザクへの愛情が消えていなかったという証なのだ、とようやくわかった時には、スザクに目をこじ開けられて、記憶をかき回す赤い光を直視させられていた。
記憶に手が加えられるその直前に、自分に誓った筈だった。
ナナリー以外、誰も愛しはしないと。
少なくとも、こんな結末を迎えるような、そんな相手に二度と好意は抱かないと。
(それなのに。どうして、俺はまた、繰り返しているんだ? )
ロロが憎い。憎しみを体内に押さえつけておくのがやっとだ。だがそれは、ロロ自身が憎いというよりも、ロロに対して持ってはいけない感情を持ち始めている自分への憎悪の反動だった。
『大丈夫。僕は、ここにいるよ』
そう言われて、泣き出してしまった不覚。その不覚の原因こそが、今育ち始めている感情の正体だ。自分の内にある想いに気づきながらも、ルルーシュは、スザクを思い出せ、と自分を叱咤する。
スザクがただの友人だったら。スザクがただの敵だったら。皇帝の前で這い蹲らされても、魂が引き裂かれる音を自分は聞かずにすんだ。裂かれ、奪われた半身は未だ戻らない。
その状況を招いたのは自分自身だとわかっているからこそ、なお性質が悪い。相手への憎しみは、そのまま自分への嫌悪となって跳ね返ってくる。
(もう二度と、あんな思いをしてたまるか!!!)
更に、ずたずたにされた自分にはナナリーへの愛情しか残されておらず、それすらも一度は偽の記憶のよって奪われていた事実が、ロロへの憎しみを加速させていた。
引き裂く側に回ることはあっても、もう二度と、自分は引き裂かれる側にまわらない。
だから、生まれつつあるこの想いがこれ以上成長する前に、この手で握り潰さなければ。
思い出せ、と自らに説く。ロロを篭絡するのは自分であって、自分がされてどうする。ロロから搾り取れるものは全て搾り取り、その後でロロは闇に葬り去る。その為に今まで演技をしてきたのではないか。ナナリーのいない隙間に、またしてもロロが入り込もうとした事実に、自分はもっと怒りを感じるべきだったのだ。
ロロの前での失態は、自分が極限まで追い詰められたから。
ロロが自分にとって、特別な存在になっているからではない。
呪文のように、ルルーシュは自分にそう言い聞かせる。
「…兄さん、大丈夫?」
気付けば、ロロはシャワーを終え、心配そうにルルーシュの顔を覗き込んでいた。ルルーシュは顔を上げる。
「ああ、なんでもない」
「…そう?」
ロロは納得したようではなかったが、それ以上は何も言わず、自分用のベッドに座る。
一体、ルルーシュが泣いていた時、ロロはどんな思いでいたのだろうと思う。何か先程のことについて一言言うべきだろうか、と思いながらも、ロロの濡れた髪を見て、
「ドライヤー、使わなくていいのか」
ルルーシュは訊いた。
「んー…、すぐ乾くからいい…」
疲れているのか、返事が鈍い。
ロロがタオルで髪を拭き始めると、はらりと、バスローブの袖がめくれて、左腕に巻かれたベルトにナイフが二本、取りけられているのが見えた。
「…それ、いつもつけてるのか」
「…これ?」
ロロがナイフに少しだけ視線をやると、ルルーシュは頷く。
「うん。つけてないと、落ち着かないから」
ロロはタオルを頭の上に乗せたまま、ナイフを抜いた。無駄のない流れるような動作に、ロロがナイフを使い慣れているのがわかる。どうしても使い勝手のいいギアス能力にばかり目が行ってしまうが、ロロは紛れもないプロの暗殺者だ。一つ間違えれば、ロロの持つナイフで、自分の首に赤い線が描かれていたかもしれない。
「体洗う時ぐらいかな、外すのは」
ロロは抜いたナイフを見つめてから、指先でくるりとナイフを反転させ、素早くナイフを元の場所に収める。
「でも、駄目だよ」
ロロは頭の上に乗せていたタオルをたたんでから、顔をゆっくりと上げながら言った。
「…何がだ?」
「シャワーを浴びている時でも、ナイフは持ってる。僕は殺せない」
ロロはルルーシュを底冷えするような瞳で、真っ直ぐ見据えて言った。
答えを間違えるな。
ルルーシュの頭脳がすぐに正しい反応を導き出す。
「ははっ…。あははっ! 笑えない冗談、言うなよ。…笑ったけど」
ルルーシュの反応を見て、ロロは目元を緩ませる。
「…そうだね」
目を伏せたロロを見て、ルルーシュは今だ、と思った。
「ロロ…その、さっきは、悪かったな。色々と」
「気にしないで…僕は、兄さんが今までしてくれことを、しただけだから」
ロロが柔らかい微笑みを顔に浮かべる。
『僕だけは兄さんの傍にいる。何処にも、いかない』
ロロの微笑を見て優しく響いた言葉を思い出し、思わず癒されそうになった自分に、ルルーシュはこの馬鹿が! と己に激怒した。
(馬鹿が。もう二度と、俺は)
「だって兄弟…だから」
自信がなさそうに言ったロロの言葉で、ルルーシュは、家族はいない、とロロが淡々と語っていた映像を思い出す。
(そうだ、ロロを篭絡するのは俺だ。俺は篭絡される側じゃない!!)
ルルーシュは、ふ、と笑って、立ち上がると、ロロの隣に座った。
「不安なのか、ロロ」
「…そりゃあ、ね」
ロロに言葉をぶつけた時。ロロに、自分では孤独を埋められないのだろう、と問われて、ルルーシュは沈黙をもって肯定した。ルルーシュの傍以外、帰る所がないロロにとっては当然不安にもなるだろう。先程「僕は殺せない」と言ってきたのも、不安の表れに他ならない。
ルルーシュは、ロロを安心させるように、肩に手をまわした。
(ロロを攻略する為だ)
ルルーシュが自分に言い聞かせると、
「…ねぇ、兄さん?」
ロロはルルーシュに身体を預けて、口を開く。
「うん?」
「僕を慰めて…」
ルル-シュはごくりと生唾を飲み込んだ。
ロロを見降ろせば、とろりとした瞳がルル-シュを見上げている。
慰める、の言葉の意味。
普段のロロが使うなら、頭を撫でてほしいだとか、そういう意味になる が、先程自分がロロの胸倉を掴んで浴びせた言葉考えるなら、艶めいた意味で使っていると考えた方がいい。
どう答える。
どう、答える。
正しいと思える答えを導き出せず、ルルーシュが答えられずにいると、
「兄さん…時間切れ」
ロロは悪戯っぽく笑った。
「え」
「まだ駄目だってことがわかっただけ、収穫かな」
そう言うとロロは、ルルーシュの腕からすり抜けて、疲れたから寝るよと、と言ってルルーシュに背を向けて横になってしまう。
ルルーシュが面食らったような表情をした後、ロロに気づかれないように安堵の息をもらそうとした時、
「兄さん、今の、どういう意味だと思った?」
ロロはくるりと振り返り、言った。
その顔に浮かんだ満面の笑みに、ルルーシュが必死に叩き潰そうとしている想いに、ロロはひょっとして気がついてるんじゃないか、とルルーシュは思った。
終
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お互いに篭絡合戦やってる兄弟。
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