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* 『綺麗なフリをしたエゴ』 の続き。ロロ視点です。
兄さん、ゴメンなさい。気づいてあげられなくて、ゴメンなさい。
ゴメンナサイ
アッシュフォード学園の校庭で、兄さんが来るのを待っていた。
ギアスの暴走範囲がどこまで拡大するか、分からない。兄さんの顔を見て話が出来なるぐらいまで拡がるかもしれない。だから、可能な内に兄さんと会って、話がしたかった。今の所、目算でギアスの効果範囲は半径150m程。兄さんに既にそれは伝えてある。
空を見上げれば、静かに、雪が舞い始めていた。
兄さんの温もりが恋しい。
早く、会いたい。
どうして、もっと兄さんを抱きしめておかなかったのだろう。
もっともっと、兄さんを抱きしめておけば良かった。
これからでも、時を止めた兄さんの身体なら抱きしめることは出来るけれど、僕の体温を兄さんに感じてもらうことは、もう出来ない。もっと、僕の存在を感じて欲しかった。
本で読んだことがある。
明日死ぬとすればどうしますか? と最初に訊く。
次は、三日後死ぬとすれば、どうしますか、と訊く。
そして、一週間、一ヵ月後、半年後、一年後、三年後、五年後、十年後と増やしていく。
最後に、こう訊く。
いつか、死ぬとしたら、どうしますか?
その最後の問いに、誰が、答えられるのだろうか。
明日、ギアスが暴走するとしたどうしますか?
一週間後、ギアスが暴走するとしたどうしますか?
一年後、ギアスが暴走するとしたらどうしますか?
いつか、ギアスが暴走するとしたら、どうしますか?
いつ、ギアスが暴走を始めるのかわかっていたら。僕は、後悔のないように、兄さんと過ごしていたのかな。
携帯が震えて、開けてみると、兄さんの名前がディスプレイに表示されていた。
真っ直ぐ前を見ると遠くに兄さんの姿が見えて、僕は電話にでた。
「兄さん…」
『ロロ』
ああ。兄さんの声を聞くだけで、安心する。
「心配しないで。大丈夫…兄さんと会う前の、元いた世界に、帰るだけだから。こうして、電話でなら兄さんと話すことも出来る」
いつ範囲が拡大するかわからないから、もう傍にはいられない。兄さんの計画を妨げることになってしまう。どこか、遠くに行かないといけない。どうするか、これから考えないと。
兄さんの傍にいられないのは寂しいけれど―でも、それ以外はあまり変わった気がしない。
元々、僕の世界には誰もいなかったのだから、当然なのだけれど。
『…ロロっ…』
兄さんの悲しそうな声を聞いて、驚いた。
『ロロ、すまない…何もしてやれなくて、すまないっ…!!』
兄さんは、すまない、と何度も繰り返した。
兄さんが謝ることじゃないのに。
「兄さん…。泣いているの?」
僕は、大丈夫なのに。
そんなに心配しなくて、いいのに。
兄さんは顔を手で覆って、俯いた。
兄さん、顔を見せて。もっと、兄さんの顔を見て、話がしたい。
おそらく近い内に、兄さんの顔を見ながら話すことも出来なくなってしまう。だから、ほんの少しでも長い間、兄さんの顔を見ていたい。
『ロロ…』
兄さん、顔を、見せて。
僕がそう口にする前に、兄さんは顔を上げた。
『忘れろ! ギアスに関する、全てを!!』
え?
兄さんに何を言われたか、よくわからなかった。
理解したのは、呪われた赤い鳥に、頭の中を勝手に混ぜられ始めてから。
頭の中に、忘れろ! という声がこだまする。
「…嫌だ…忘れたくない…」
忘れたくたい。忘れたくない。忘れたくない。
兄さん、どうして?
頭に響き渡る声に抵抗しながら、僕は、兄さんの顔を見た。
え?
兄さん、どうして、そんなに、寂しそうな、辛そうな顔、してるの?
兄さんが浮かべる表情はどこかで見たことがあった。
どこ…か…で…。
思い出す。
不安になるたびに、ただ、聞いて欲しくて、僕は兄さんに笑って言った。
『怖いことがあるとしたら、兄さんにふれても、兄さんに気づいて貰えなくなることかな』
心配はさせないように、軽く、言ったつもりだった。
あの時、兄さんが浮かべていた表情。
ああ、そうか。
あれは、同情なんだと思っていた。
でも、違った。
あの時から、僕は兄さんに辛い思いをさせていたんだ。
辛い、寂しい、思いを。
僕は、兄さん一人に、そんな思いを抱えさせてしまっていた。
兄さんは只でさえ、重いものを一人で抱え込み過ぎていたのに。
ごめんなさい、兄さん。気づいてあげられなくて、ゴメンなさい。
自分ばかりが、孤独を生きるんだと思っていた。
自分だけが、一人になるのだと、思っていた。
こんなに兄さんのことが大好きなのに、僕は、兄さんに辛い思いばかりさせていたことに気づいていなかった。
すまない、と兄さんは繰り返していた。
でも、兄さんには、謝る義務なんてない。
謝らなければいけないのは、僕の方。
「…忘れたくない…だって忘れたら…僕は…」
忘れたくない。
せっかく、自分のしてしまったことの意味に、気づけたのに。
忘れてしまうなんて。
忘れてしまったら、また同じように、兄さんを傷つけてしまう。
兄さんの気持ちはわかっているつもりだった。
でも、それは、僕が欲しかったものとは違うものだと、思っていた。
自分ばかりが、切なくなるぐらいに兄さんが好きなのだと、思っていた。
兄さんがどれだけ深く僕を愛してくれていたか、忘れてしまったら。またきっと、僕は繰り返してしまう。
「兄さん…嫌だよっ…助けて…」
兄さん、お願いです。
謝らせて下さい。
兄さん、お願いです。
どうか、心からの謝罪を聞いて下さい。
兄さん、お願いです。
僕がどれだけ兄さんのこと好きか、聞いて下さい。
兄さん、お願いです。
僕に、
もう二度と、
貴方を傷つけさせないで下さい。
「にいさ…」
兄さん、本当に、ゴメンなさい。
愛してる。
待人目醒メズに続く。
戻る
BGM:キミガタメ(『Pure』収録版) vocal by Suara
兄さん、ゴメンなさい。気づいてあげられなくて、ゴメンなさい。
ゴメンナサイ
アッシュフォード学園の校庭で、兄さんが来るのを待っていた。
ギアスの暴走範囲がどこまで拡大するか、分からない。兄さんの顔を見て話が出来なるぐらいまで拡がるかもしれない。だから、可能な内に兄さんと会って、話がしたかった。今の所、目算でギアスの効果範囲は半径150m程。兄さんに既にそれは伝えてある。
空を見上げれば、静かに、雪が舞い始めていた。
兄さんの温もりが恋しい。
早く、会いたい。
どうして、もっと兄さんを抱きしめておかなかったのだろう。
もっともっと、兄さんを抱きしめておけば良かった。
これからでも、時を止めた兄さんの身体なら抱きしめることは出来るけれど、僕の体温を兄さんに感じてもらうことは、もう出来ない。もっと、僕の存在を感じて欲しかった。
本で読んだことがある。
明日死ぬとすればどうしますか? と最初に訊く。
次は、三日後死ぬとすれば、どうしますか、と訊く。
そして、一週間、一ヵ月後、半年後、一年後、三年後、五年後、十年後と増やしていく。
最後に、こう訊く。
いつか、死ぬとしたら、どうしますか?
その最後の問いに、誰が、答えられるのだろうか。
明日、ギアスが暴走するとしたどうしますか?
一週間後、ギアスが暴走するとしたどうしますか?
一年後、ギアスが暴走するとしたらどうしますか?
いつか、ギアスが暴走するとしたら、どうしますか?
いつ、ギアスが暴走を始めるのかわかっていたら。僕は、後悔のないように、兄さんと過ごしていたのかな。
携帯が震えて、開けてみると、兄さんの名前がディスプレイに表示されていた。
真っ直ぐ前を見ると遠くに兄さんの姿が見えて、僕は電話にでた。
「兄さん…」
『ロロ』
ああ。兄さんの声を聞くだけで、安心する。
「心配しないで。大丈夫…兄さんと会う前の、元いた世界に、帰るだけだから。こうして、電話でなら兄さんと話すことも出来る」
いつ範囲が拡大するかわからないから、もう傍にはいられない。兄さんの計画を妨げることになってしまう。どこか、遠くに行かないといけない。どうするか、これから考えないと。
兄さんの傍にいられないのは寂しいけれど―でも、それ以外はあまり変わった気がしない。
元々、僕の世界には誰もいなかったのだから、当然なのだけれど。
『…ロロっ…』
兄さんの悲しそうな声を聞いて、驚いた。
『ロロ、すまない…何もしてやれなくて、すまないっ…!!』
兄さんは、すまない、と何度も繰り返した。
兄さんが謝ることじゃないのに。
「兄さん…。泣いているの?」
僕は、大丈夫なのに。
そんなに心配しなくて、いいのに。
兄さんは顔を手で覆って、俯いた。
兄さん、顔を見せて。もっと、兄さんの顔を見て、話がしたい。
おそらく近い内に、兄さんの顔を見ながら話すことも出来なくなってしまう。だから、ほんの少しでも長い間、兄さんの顔を見ていたい。
『ロロ…』
兄さん、顔を、見せて。
僕がそう口にする前に、兄さんは顔を上げた。
『忘れろ! ギアスに関する、全てを!!』
え?
兄さんに何を言われたか、よくわからなかった。
理解したのは、呪われた赤い鳥に、頭の中を勝手に混ぜられ始めてから。
頭の中に、忘れろ! という声がこだまする。
「…嫌だ…忘れたくない…」
忘れたくたい。忘れたくない。忘れたくない。
兄さん、どうして?
頭に響き渡る声に抵抗しながら、僕は、兄さんの顔を見た。
え?
兄さん、どうして、そんなに、寂しそうな、辛そうな顔、してるの?
兄さんが浮かべる表情はどこかで見たことがあった。
どこ…か…で…。
思い出す。
不安になるたびに、ただ、聞いて欲しくて、僕は兄さんに笑って言った。
『怖いことがあるとしたら、兄さんにふれても、兄さんに気づいて貰えなくなることかな』
心配はさせないように、軽く、言ったつもりだった。
あの時、兄さんが浮かべていた表情。
ああ、そうか。
あれは、同情なんだと思っていた。
でも、違った。
あの時から、僕は兄さんに辛い思いをさせていたんだ。
辛い、寂しい、思いを。
僕は、兄さん一人に、そんな思いを抱えさせてしまっていた。
兄さんは只でさえ、重いものを一人で抱え込み過ぎていたのに。
ごめんなさい、兄さん。気づいてあげられなくて、ゴメンなさい。
自分ばかりが、孤独を生きるんだと思っていた。
自分だけが、一人になるのだと、思っていた。
こんなに兄さんのことが大好きなのに、僕は、兄さんに辛い思いばかりさせていたことに気づいていなかった。
すまない、と兄さんは繰り返していた。
でも、兄さんには、謝る義務なんてない。
謝らなければいけないのは、僕の方。
「…忘れたくない…だって忘れたら…僕は…」
忘れたくない。
せっかく、自分のしてしまったことの意味に、気づけたのに。
忘れてしまうなんて。
忘れてしまったら、また同じように、兄さんを傷つけてしまう。
兄さんの気持ちはわかっているつもりだった。
でも、それは、僕が欲しかったものとは違うものだと、思っていた。
自分ばかりが、切なくなるぐらいに兄さんが好きなのだと、思っていた。
兄さんがどれだけ深く僕を愛してくれていたか、忘れてしまったら。またきっと、僕は繰り返してしまう。
「兄さん…嫌だよっ…助けて…」
兄さん、お願いです。
謝らせて下さい。
兄さん、お願いです。
どうか、心からの謝罪を聞いて下さい。
兄さん、お願いです。
僕がどれだけ兄さんのこと好きか、聞いて下さい。
兄さん、お願いです。
僕に、
もう二度と、
貴方を傷つけさせないで下さい。
「にいさ…」
兄さん、本当に、ゴメンなさい。
愛してる。
待人目醒メズに続く。
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BGM:キミガタメ(『Pure』収録版) vocal by Suara
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