忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

・ 只今(管理人が)13話に反逆中。具体例:「え? 13話? そんな話あったっけ…」 こんな時だからこそ悲しくならないSSをっ!
・ ロロが漢です。
・ 第一期にロロがいたら!? というSS。
・ 一期の5話の時の話です。見てないとわけがわからないかもしれません。
・ ロロとルルーシュは血が繋がった兄弟です。
・ 『最強兄弟』とは多分繋がっていない話です。




 仲の良い兄弟でも、一つ屋根の下で年中一緒に暮らしていれば、喧嘩の一つや二つはある。
 将来結婚の約束でもしているのでは、なんて噂が流れるほどの仲であるルルーシュとロロも、その例外ではなかった。幼かった頃、

「お兄様達は、喧嘩が出来て羨ましいです」

 なんてナナリーは言っていたが、当時の幼いロロとルルーシュにとって、その言葉は謎だった。何しろ本人達は真剣にお互いの意地をかけて戦っていたワケで、羨ましがられる要素なんてこれっぽちもなかったのだ。成長していくにしたがって、激しい口論は少なくなっていったが、逆に静かな睨み合いがクラブハウスのダイニングで繰り広げられることが多くなった。(最近の喧嘩の原因は主にルルーシュの賭けチェスだ)
 
 とは言うものの、一年の殆どは恋人同士と見まごうような二人だった。だが、まれなケースの中に更にまれなケースがあって、十代に入ってから、一度だけ掴み合いの喧嘩に発展したことがあった。さすがにこの時だけはナナリーも驚いたが、ルルーシュがあっさりロロに負けて(自分から完全降伏した)、負けた兄も、簡単に兄に勝ってしまった弟も色々な意味で深くショックを受けて、それ以来手が出る喧嘩になったことは一度もなかった。

 そんな、兄弟だった筈なのだが。 

 ルルーシュは自分の胸倉を掴むロロの手を見ながら、この状況をどう打破するべきか、脳をフル回転させていた。



   弟の逆鱗 ― そして都合のいい願望



『間違った方法で手に入れた結果に、価値はないと思うから』

 伸ばした手をスザクに拒絶されて、動揺していたルルーシュがクラブハウスに帰ると、容赦なく修羅場が出迎えた。ダイニングの扉を開けると、死んだ筈の、緑色の髪の女が拘束衣を着たまま、何故かナナリーと一緒に鶴を折っていたのだ。

 それだけならまだ良かった。
 緑の髪の女から少し離れた所―丁度ルルーシュが開けたドアから見て正面―で、ロロが両肘をテーブルにつき、口元の辺りで指を絡ませながら、入ってきたルルーシュを絶対零度の視線で見つめていた。

 お帰りなさい、お兄様、だとか、せっかくC.C.さんが来られたのに…と言うナナリーの言葉は殆ど耳に入らず、この女は誰だと無言で訊いてくる氷の瞳にルルーシュは射抜かれるままになっていた。

 私達は将来を約束した仲なんだ、とC.C.と呼ばれた女がナナリーに勝手に説明し始めたあたりで、ルルーシュの意識はやっと、無言の尋問者からナナリーに向いた。

(まずは、なんとかナナリーからこの女を引き離さなければ)

 ルルーシュはテーブルに乗っていたティーカップを一つ手にとって、床に落とした。
 カップが音を立てて割れる。ナナリーがその音にびくりとする横で、

「ああ。何やってるんだよ、C.C.。濡れちゃってるよ。ほら、洗面所に行かないと。着替えもだしてやるから。…悪い、ロロ。片付けておいてくれるか」

 ルルーシュは適当にそう言いながら、C.C.と呼ばれた女を廊下に連れ出した。

「…わかったよ」

 背後から聞こえた声の温度が低かったのは言うまでもなく、ルルーシュの背中には勿論冷たい視線が突き刺さっていた。

*   *   *

 C.C.をなんとか自室へと押し込み、二人で話をしたが、C.C.からは何も情報を引き出すことが出来ず、ただベッドを占拠されただけだった。脱ぎ散らかされた拘束衣に嘆息しながら、ロロにどう説明するかを考え始めた瞬間、ノックも無しにドアが開かれた。

「………」

 ドアを後ろ手に閉めながら、ロロの視線が、脱ぎ散らかされた拘束衣、ベッドで眠る女、最後にルルーシュの順で動く。

「ロロ」

 無表情で見つめてくるロロに只ならぬ空気を感じて、ルルーシュは宥めるようにロロの傍に歩み寄りながら名を呼んだ。
 
 ロロの肩に手をやろうとした瞬間、視界がぐるりと水平方向に回転した。気付けば、壁の方を向いていた筈の自分の背中が壁に押し付けられ、胸倉をロロに掴まれていた。その手は、小刻みに震えている。

「一体何をやらかしたワケ…?」
 
 押し殺した声で、ロロは言った。
 自分がやらかしたことをルルーシュは頭に浮かべた。ここ数日間だけでも、報告書何百枚分が作れそうなことを自分はやらかした。

「いや…質問を変えるよ…何をやらかしてるの? 前見てみたら、兄さんの口座に凄い数字が並んでるし、この前は帰りが遅いと思ったら、八つ当たりしてくるし、今日だってゼロとかいう奴の騒ぎがあって心配して電話したのに兄さんに連絡つかないし、どう見ても不審な女が兄さんの知り合いだって言って家に来るし」

 ルルーシュは自分の胸倉を掴むロロの手を見ながら、この状況をどう打破するべきか、脳をフル回転させていた。
 ロロがこういう行動に出たのは、十代に入ってからは、一回しかない。それほど今、自分はロロを怒らせている。ここ最近、心配のかけ通しだった上に、ロロから見ればルルーシュの行動に不審な点はあまりに多かったのだろう。
 こうなるだろうとは分かっていたから、ロロに話そうとは思っていたのだ。ギアスの力のことも、全て。だが、それは実験を終えてからにしたかった。
 出来ることなら今話してしまいたいが、そういうわけにもいかない。まずC.C.と名乗る女から、出来うる限りの情報と「契約」の意味を引き出さなければならない。話すのはそれからだ。

 そして、もう一つ、ロロに今までギアスのことを告げられなかった理由が、あった。

「ロロ…全部、話すから。必ず」

 だが、この状況を見られてしまった以上は仕方がない。拘束衣を着ていた人間が堂々と部屋に眠っているなんてことは、普通はありえない。

「本当に?」
「お前に嘘をついたことはないだろう?」
「…誤魔化されたことは何度もあるけどね。…いつ、教えてくれるの?」

 すかさずそう訊かれ、やっぱり俺の弟だと思いながら、

「明日の夜」

 ルルーシュが即答すると、服を掴むロロの手に込められた力が若干和らいだ。

「約束する?」
「ああ…約束する」

 ロロの瞳が、探るようにルルーシュの瞳の奥を見た。ルルーシュただ、真っ直ぐロロに視線を返す。

「わかった…信じるよ」

 ロロの手が、離れた。

「先に部屋に行ってる」
「……ん?」

 ロロの言葉の意味を図りかねて、ルルーシュは訊き返した。

「そこで眠るわけじゃないでしょう?」

 ロロが視線をC.C.が眠るベッドに向ける。

「あ…ああ。そうだな」

*   *   *

 C.C.の服を洗濯機に放り込み、シャワーを浴びて今日一日の行動の反省をしてから、ルルーシュはロロの部屋に向かった。
 部屋に入るとロロは寝巻き姿でパソコンに向かっていた。

「邪魔するよ」
 
 ルルーシュがロロのベッドに座ってそう言うと、ロロは数秒間、タイピングを続けてから、ルルーシュの方に向き直った。

「…ごめん、さっきは」
「いや…どう見ても怪しい状況だったからな。仕方ない」
「兄さん甘いよ。もっと怒ってもいいんじゃない? 弟に胸倉掴まれたんだから」

 ロロは苦笑した。

「…それぐらい、反省していると思ってくれないか。心配かけて悪いって。何故手がでるぐらいにお前が怒ったかは、理解してるさ。…それに、感謝もしてる」

 自分の為に、本気で怒ってくれたことを、とは続けなかった。

「…本当にしてるのかなぁ、反省」

 言いながら、ロロはパソコンをシャットダウンした。

「…でも心配してるって、わかってくれてるだけでいいかな。今は」

 微笑むロロを見ながら、ルルーシュは考える。
 明日の夜。全てを話したら、ロロは自分の行動を、受け入れてくれるだろうか。
 こうやってまた、微笑んでくれるだろうか。

『間違った方法で手に入れた結果に、価値はないと思うから』

 スザクの言葉を思い出して、胸に痛みが走る。
 本当は、ギアスの力を手に入れてすぐに、ロロにそれを告げたかった。
 それを阻んだのは、「ゼロ」として行動を起こす前にロロに拒絶されてしまったら、という恐怖だった。

 ゼロの名を多くの人間の前に晒した今でも、ロロに拒絶される恐怖はある。それだけのことを己が行い、そしてまた、行おうとしているのだという自覚もある。
 

 それでも。


 ロロが自分の選択を、笑顔で受け入れてくれたなら、と。


 そう、願わずにはいられない。


 それが、世界に反逆する自分の、都合のいい空想だと、わかってはいても。




戻る



BGM:Plenty of grit song by Hayashibara Megumi

「ただ、わたしに何か言えるとすれば――、重要な決断をしたときに、自分の隣にいる人が笑顔で賛成してくれると、どんなときよりも嬉しいものよ、きっと」(リリアとトレイズ5巻より)
PR
癒し系ボタン
現在のお礼SS:ロロルルロロ一本。
効能:管理人のMP回復。感想一言頂けるととても喜びます。
忍者ブログ [PR]