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  不安ト安心



 それは、ロロが自室から出た瞬間に起こった。
 ぐらり、と視界が歪む。
 自分の身体に何が起こったのかよくわからないまま、ロロは壁に手を当てて座り込む。吐くほどではないが、胃が妙に重くて気持ちが悪い。
 何故、何故。
 しっかり健康管理もしてたし、こんな風になったのはじめてだ。と、ロロは動揺しながらも、冷静になろうとした。
 今、自室を出たばかりだ。戻って横になっていよう。そう思って立ち上がろうとするが、脚に力が入らない。
 そのまま床に向かって倒れそうになるが、ロロはなんとかドアノブを掴んで自分の身体を支えた。
 誰か、誰か……。
「兄、さん……」
 か細い声でそう口にしてしまい、ロロは驚いた。ルルーシュ・ランペルージ本人がいない所で、「兄さん」などと呼ぶ必要はない。あるとすればそれは…。
「兄さん…」
 タスケテ。
 何故自分はルルーシュに助けを求めているのだろう。その事実と、自己管理が甘かったのかと思う情けなさに涙がでそうになりながらも、なんとか立ち上がろうとする。
 そういえば、此処のところ、ずっと自分は不安定だった。
 自分と年の近い少年・少女が、学園には沢山いる。彼らはロロをクラスメイトと見なしたり、後輩と見なしたりと、見なし方の形は様々あったが、ロロが今まで求められていた人間関係とは、明らかに違うものを要求していたことだけは確かだった。彼らが何をロロに求めているのか、ロロはどうすればいいのか。それを理解するのに、散々苦労した。
 一番苦労したのはルルーシュとの関係だ。それまで愛情など受けたことのないロロが、ある日突然、ルルーシュから家族としての愛情を一心に受けるようになったのだ。ロロにはその受け止め方(頭では本を読んだ知識を通して理解していたにしても)がわからなかった。
 ルルーシュの何気ない優しさに何度も戸惑った。
 どうしてこの人は、弟だからと言って、本当は赤の他人であるロロに優しくしてくれるのだろう。これが、家族というものなのだろうか?
 ルルーシュの行動はロロの理解を超えていて、日々向けられる愛情に、一度は恐怖すら覚えたことがあった。
 最近になってやっと慣れてきたところだったが、そういった人間関係の疲れが今になって一気にでてきたのかもしれない。
 そうやって自己分析を頭の中で進めることは出来ても、依然として脚に力が入らない。
 なんとかしないと、ともう一度、立ち上がろうとした時、
「ロロ!?」
 廊下にルルーシュの声が響いた。
 顔を上げると、ルルーシュが全速力で駆け寄ってくるのが見える。
 ああ、兄さん。
 ルルーシュの姿を見た瞬間に力が一気に抜けて、ロロは倒れこむ。
 床に崩れ落ちる前に、ルルーシュに身体を受け止められた事だけを認識すると、ロロは意識を手放した。

*   *   *

 目を覚ますと、ロロは自室のベッドで横になっていた。
額の上には冷たいタオルがのっている。首を動かすと、すぐ傍にある椅子に座っていたルルーシュが、何か飲むか? と訊いてきた。
 うん、水が欲しい、ロロが身体を起こしながら答えると、ルルーシュはすぐにコップに水を注いでロロに渡す。
「少しタチの悪い風邪みたいだな…今日は一日寝てろよ」
 ロロが素直にうん、というと、ルルーシュは、
「熱は、どうだ?」
 自分の額を、ロロの額に触れさせた。
 どくん、とロロの心臓が震える。
 これは、熱を計ってるんだ。そうだ、熱を計ってるんだ。
 家族だから、心配して熱を計ってくれているんだ、と自分に言い聞かせながら、
「うつるよ。兄さん」
 ロロは困ったように言った。
「上等だ。それでロロがすぐに治るなら俺はそれで構わない」
「…もう…」
 額をつけたまま言われて、ロロはルルーシュから視線を外す。
「まだ、だいぶ高いみたいだな」
 ルルーシュはそう言って額を離す。
「あとでまたタオルを冷やさないとな。そうだ…何か、食べたいものは?」
「…ん…。あまり食べたくない…かな…。寝てる」
「そうか」
 顔が赤くなっているかもしれない、そんな顔を見られたくなくて、ロロは再び横になる。
 目を閉じてから、ルルーシュに助けを求めたことを思い出す。ルルーシュの姿を認めた瞬間に、安心して力が抜けてしまったことも。
 こうやって横になっている時も、傍でルルーシュがいてくれているだけで、安心して眠れる自分がいるのだ。
 何かが変わっていく自分に不安になる一方で、兄の存在を傍に感じる安心感のなかで、ロロは眠りに落ちた。


 一度眠ってから、目を覚ますと、ルルーシュがリンゴを剥いてくれた。薄いりんごの皮は、最初から最後まで切れていない。芸術的とすら言えるぐらいに、綺麗に剥かれていた。





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 ロロ様はベタな状況にとっても弱いのです。
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現在のお礼SS:ロロルルロロ一本。
効能:管理人のMP回復。感想一言頂けるととても喜びます。
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