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 ・R2の五話の少し後ぐらいの話。
 ・若干ホラーテイスト。(真夏仕様?)
 ・ロロが怖いです
 ・それでもよろしければ、お進み下さい。



   逃ゲラレルト、思ッテル?




 ルルーシュは、ほくそ笑んでいた。
 ルルーシュに対して敬語を使い続けるロロに、「俺達、兄弟だろう?」とルルーシュがたしなめた瞬間のロロの顔が、忘れられない。
 ちょろいものだ。
 最初はロロが何を求めている人間なのか、全く分からなかった。だが、ロロの求めるものが家族の愛情だと理解してからは、こちらが容易く主導権を握ることが出来た。
 さぁ、いくらでも、お前の望む愛情らしきものは与えてやる。俺の手の上で踊るがいい。
 俺に憎まれていることも知らずに、愛されていると愚かしく勘違いしているがいい。
 俺の憎悪に気付いた時には、お前はもう、何処にも行けず、捨て去られるだけの存在になっているだろう。

 そうやってロロの全てを掌握した気でいるルルーシュは、自分の身体にも、魂にも、何処かから垂らされた糸が絡み付いていることに気付いていなかった。

*   *   *

 大勢の人で賑わう夕方のショッピングモールに、ルルーシュは一人でいた。その片手には水色の紙袋が下げられている。生徒会で使うという名目のお菓子(多分会長のお腹に入るだけだろう)がその中には入っていた。
 買い物が終わると、ルルーシュはショッピング・モールの中を適当に歩き始めた。はたから見れば、ウィンドウ・ショッピングをしている学生にしか見えないが、ルルーシュの頭の中では黒の騎士団の今後の構想が、絶え間なく編まれていた。こうして誰にも邪魔されずにただ歩いていた方が、考えが纏まることもある。
 雑貨店、紳士服売り場、カフェの前に並ぶコーヒー豆の棚……などをちらりと見ながら通り過ぎる。やがてルルーシュが、水槽の並ぶ人気のないペットショップを歩いていると、携帯電話が振動を始めた。取り出して画面を見ると、ロロの名が表示されていた。

「どうした?」
『兄さん、今どこ?』
「ん? 今はペットショップだよ。…ほら、前にシュリンプが高すぎるって話をした所」
『そっか。…あのさ、ついでに買ってきてほしいものがあって電話したんだ。まだ店にいるかな、と思って』
「何を買ってくればいいんだ?」

 ルルーシュが訊いてから、ロロの返事があるまで、若干間があった。

『兄さん…その前に、一つ訊いてもいい?』

 突然ロロの声色が変わった。ルルーシュの頭が警戒を始める。つい先日のスザクの復学歓迎会以来、ロロはこちらを信頼したように見えるが、まだ何処に地雷があるのかわからない所がある。
 ロロの発する言葉の一つ一つ、声音の変化、全てを吟味しなければ、一つ対応を間違えただけで、文字通り命取りになってしまう。ロロにはそれを実行するだけの力があるのだ。
 相手は幼い頃より、人を殺し続けた暗殺者。

「…どうしたんだ?」

 警戒する内心とは裏腹に、ルルーシュは軽い口調で訊いた。次にロロの口から何が出てきても対応できるように集中しながらも、ペットショップをでて、近くにあった木製のベンチに座る。

『兄さん…帰ってきたら…する?』

 鼓膜を撫でるような声に、ルルーシュの背筋にぞくりとした震えが走った。

「何を?」
『わかってるくせに』

 クスクスクスクス……。という笑い声が耳元で発せられる。
 丁度ルルーシュの真上にあった空調の風が、ルルーシュの首筋から体温を奪いながら吹き抜けていった。

『最近忙しかったから、…全然してなかったし。バベルタワーのことがあってから。…一度も、ね』

 互いの肌を、熱を求め、いくら探っても足りないと、ロロと散々快楽を貪り尽した夜の連続。その記憶を汚らわしいと封印していたというのに、易々とその扉は、耳に入り込んで来たロロの声によってこじ開けられた。

『…兄さん?』

  ド  ウ  シ  タ  ノ  ?

 ロロの声が、身体の奥底にまで侵入してくる。
 骨の髄まで利用してから、捨ててやるという決意した相手だというのに、ロロの声は一年間の夜の記憶を忘れることのないルルーシュの身体を、絶え間なく誘惑した。

(違う。あれは、記憶がなかったからだ。だから…!)

 そうルルーシュが自分に抗弁した所で、今、身体がロロの熱を求めているのは否定しようがなかった。

(どうして、俺は…)

 ロロが憎くてたまらない筈だ。記憶を取り戻してから、肌を重ねなかったのも、そのせいの筈だ。なのに。

『兄さん?』

   ネ ェ、 ド ウ シ タ ノ ?

 ルルーシュは思わず、携帯を切った。切ってしまってから、自分が何をしてしまったのか気付いた。すぐに、かけ直そうと親指を動かそうとすると、

 ROLO

 と、携帯のディスプレイに表示されると同時に、携帯の振動が始まった。応答のボタンを恐る恐る押して、再び、携帯を耳に当てる。

「悪い、電波の具合が悪かったみたいで」
『そうみたいだね。…で、どうする兄さん? 疲れてるんだったら、仕方ないけど。…でも僕は、したい、な…』

 ルルーシュの耳に、ロロの濡れた声が響く。

「俺もだよ」

 今、俺は何と言った?

『本当?』
「ああ。…ここのところ、ご無沙汰だったしな」

 俺ハ、何ヲ言ッテイル? ソシテ何故、俺ノ身体ハ、何カヲ期待シテイル?

『じゃあ…アレ、買ってきてもらってもいい?』
「わかった。なるべく遅くならないように帰るよ」
『…待ってる』
「じゃあ…」
『ああ、待って兄さん』
「ん?」

 今夜ハ イイ夜ニ シヨウネ。

*   *   *

 クラブハウスにあるルルーシュの部屋ではカーテンが閉められ、明かりが落とされていた。ロロの持つ携帯電話だけが、光が発している。

「今夜は、いい夜にしようね」

 そう言うと携帯を切って、ロロは携帯を開いたまま傍らに置き、ルルーシュのベッドにごろりと転がった。
 携帯の明かりに照らされて、ロロの瞳が妖しく光っていた。ロロはルルーシュの枕を抱きながら、うっとりとした顔で言った。

「…兄さん。僕から、逃げられると、思わない方がいいよ」

  僕ガ 兄サンカラ 逃ゲラレナイノト 同ジヨウニ

「僕に兄さんが刻まれているのと同じように、兄さんにも僕が刻まれている」

   ネェ、気付イテル?
   兄サンモ 僕ナシデ 生キラレナクナッテルッテ
   イツ 気付クノカナァ?
   ネェ、兄サン?

「兄さん、早く、帰ってこないかな……」

 ロロがルルーシュの枕をぎゅう、と抱きしめた。
 携帯電話の明かりが消えて、部屋に暗闇が横たわった。




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効能:管理人のMP回復。感想一言頂けるととても喜びます。
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