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・盤上のネタばれを含みます。
・それでもOKという方のみお進みください。















   あえて厳しく



 ルルーシュ VS 女子留学生。水泳で勝つのは、果たして、どっち!?
 夕飯をかけた兄弟の賭けには、当然のように弟が勝った。

「じゃあ私、これから用事があるから! 楽しかったよ」
 
 アッシュフォード学園のプールに、女子留学生の声が響いた。
 制服姿のロロが手を振って彼女を見送ると、プールにいるルルーシュと、プールサイドのロロだけが残された。

「賭けは僕の勝ちだね、兄さん。今日の夕飯、楽しみにしてるよ」

 プールで打ちひしがれているルルーシュにロロがにっこりと笑って言うと、

「ありえない…女性に…しかも初心者に…」

 ルルーシュはロロの声が聞こえていないようで、一人で呻いていた。

「兄さーん?」
「呼吸の仕方を間違えたのか…。いや、呼吸はあれで合っていた。泳法も決して間違ってなかった…」
「おーい兄さーん…」
「力配分のせいか? いや…俺が25m付近にいる時、彼女は既にターンしていた…。…そうか、勝負を自由形にするのではなく、平泳ぎ限定にするべきだったか。それならなんとか…。それに100mではなく、50mにすればよかったな…。いや違う。何か根本的なところで何かが間違っていたんだ。そうでなければ俺がこんな風に惨敗するわけがない…。プールの塩素に問題が…」
「……兄さん戻ってきて……」

 プールの水に身体を浸したまま、ルルーシュはひたすら考え続ける。ロロはプールサイドで軽くしゃがみながら、ルルーシュが自分の世界から帰ってくるのを待つ。

 自分に勝算がある賭けを…と思って、ルルーシュに水泳対決をさせたのは自分だが、まさかルルーシュがあそこまで女子学生相手に大差をつけられるとは思っていなかった。自由形100m対決で、相手が泳ぎきった時、ルルーシュがいたのは60m付近。
 しかも相手は泳ぐのはそれ程得意ではないらしく、対決が始まる前にロロにクロールのやり方を聞いてきたぐらいだ。
 その相手とついた差、約40m。

 それはショックを受けるだろうな、とは思うのだが、先程からルルーシュの分析を聞いていると、どうも自分が負けた本当の理由から必死に目を背けているようにしか聞こえない。
 問題は戦略にあるのではなく、ルルーシュの体力そのものだ。ロロが見る限り、ルルーシュの泳法は間違っていなかったし、20m付近まではそれなりの速さで泳いでいた。だが途中から目に見えて速度が落ちていた。スタミナ不足以外の何ものでもない。
 これを機に、少しは体力不足を解消する為に対策する気になってくれれば…と思うのだが、

「そうか…水着の抵抗が……」

 ルルーシュの思考はどうやらその方向には行きそうにない。
 そこまで体力作りが嫌なのか…。と思う。自分も団体競技なら好きではないが、身体を動かすのは割りと好きな方なので、そこまで運動を嫌う理由がわからない。

「…ロロ…」
「あ、やっと戻ってきた」

 先程まで宙を彷徨っていた視線が、ようやくロロに向けられた。

「ロロ…訊きたいことが…あるんだ…」
「何?」
「俺にギアスは…使ってないよな…?」

 ロロは黙ってルルーシュの瞳を見る。必死に助けを求めるような目だ。
 おそらく、本当にロロがギアスを使ったと疑っているのではなく、嘘でもいいから「使ったよ」とロロに言ってもらうことで、ショック状態から抜けたいのだろう。「俺は本当は勝てたんだ」と。
 ルルーシュは相変わらず、助けを求める子犬のような目でロロを見てくる。
 それが兄の為になるなら、「使ったよ」と言うことも苦ではない。
 だが…。

「兄さん…。使っても使わなくても結果が大して変わらないのに、わざわざ使ったりしないよ」
「…うっ…」

 ロロは敢えてざっくりと斬った。
 「俺のジャンルじゃない」と逃げてばかりいないで、少しでいいから自分の体力のなさに向きあうべきなのだ。ルルーシュは。
 傷ついたような顔をしているルルーシュを見て、心が痛まないわけではないが、兄の為なら耐えてみせる。

「そうだな…俺は…」

 そこまで言うとルルーシュは項垂れた。
 少し言い過ぎただろうかと、とも思うが、これぐらいやっておかないと、光の速さでこの出来事など無かったことにされてしまうだろう。

「ちょっと…体力に問題があるかもな…」

 ロロは少し感動した。ルルーシュが自分の体力の無さに向き合った。これは偉大な一歩だ。
 今まで一度たりとも自分の体力に問題があることを、認めたがらなかったのだから。
 はっきり言って良かった……!! と自然と顔が綻んでしまう。

「兄さん。…夕飯は、僕が作るよ」
「…どうした、急に?」

 ルルーシュが自分の問題を認めてくれたことが嬉しくて、ロロは微笑んだ。あとはルルーシュが「喉もと過ぎれば熱さを忘れる」状態にならないように手助けするだけだ。

「その代わり…。ゆっくりでいいから、今日中に1km泳いでv」
「1キロ……!?」

 ルルーシュが素っ頓狂な声を上げた。

「うん。体力に問題があるって気付いたなら、今から行動しなきゃ。明日はウォーキングにしようか」
「…ロロ…」
「ん?」
「…250m」

 ルルーシュが真剣な眼差しで言った。

「ダメ、1km」
「350m」
「……900m」
「450!!」
「800」
「550!!」
「…750。これ以上は減らせないよ」
「頼む、700にしてくれ」
「わかった、じゃあ、700で」

 交渉成立の握手をすると、

「…いつ終わるかわからないぞ…?」

 ルルーシュが遠い目をしながら言った。

「うん、兄さんが700m終わるまでちゃんと見てるから、気にせず泳いでv」

 逃がさないからね? という意味も含めながら、ロロは笑って言った。




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 ・水泳対決時のルルーシュは憐れなまでに遅いです…。思わずボタンを押す手を止めそうになるぐらいに。
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現在のお礼SS:ロロルルロロ一本。
効能:管理人のMP回復。感想一言頂けるととても喜びます。
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