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何十回でも。
何百回でも。
何千回でも。
何万回でも。
例え、無限に繰り返されても。
それでも………。
ある所に、小さな男の子がいました。
男の子には、一緒にいてくれる人が誰もいませんでした。それでも、男の子は独りきりでなんとか生きてきました。
ある冬。とても、寒い夜でした。せっかく見つけた住処も、今朝追い出されてしまったので、男の子には何処にも行く所がありません。
男の子はお腹をすかせていましたが、食べるものは何も持っていませんでした。
男の子は夜の街を、とぼとぼと宛てもなく歩いていきます。立ち並ぶ家の中からは、暖かい光と幸せそうな声が漏れてきました。
男の子が道を歩き続けると、やがて空から白い雪が降ってきました。
…お腹がすいた。
…寒い。
ただそれだけを考えながら、男の子は道を歩き続けました。
街の外れに来てしまうと、男の子は疲れ切ってしまっていて、降り積もる雪の中に倒れてしまいました。
男の子はなんだかとても眠くなってしまって、そのまま目を閉じてしまおうとしました。
…もう、寒いのも、お腹がすくのも嫌だ。
眠ってしまえば、もう辛い想いをしなくてもいいのだと、男の子は思っていたのです。
その時でした。
「眠ってはいけないよ」
優しいお兄さんの声がして、男の子は目を開けて、倒れたまま声のした方を見上げました。
そこに立っていたお兄さんは、長いコートを着ていて、フードを目深にかぶり、片手に傘を持って男の子に雪がかからないようにしてくれていました。
男の子が何も言えないでいると、お兄さんはしゃがんで言いました。
「立って。…少し、傘を持っていてほしいんだ」
お兄さんの優しい声がとても暖かくて、男の子は、頑張って立ち上がりました。
男の子はお兄さんから傘を受け取って、自分とお兄さんに雪がかからないように持ちました。
「ちょっと、待っていてね」
お兄さんは、そう言うと肩からかけていた鞄をあけて、中に入っていた魔法瓶を取り出しました。お兄さんが魔法瓶のふたをあけると、湯気と共にとても甘い香りがしました。お兄さんは魔法瓶の蓋に中の飲み物を入れると、
「はい、傘と交換だよ」
そう言って、飲み物を男の子に差し出しました。
男の子は傘をお兄さんに渡して、飲み物を受け取ります。
受け取った時、冷え切った指にじんじんと温かさが伝わっていきました。
飲み物は、温かいココアでした。男の子がゆっくりとそれを飲むと、身体中に温かさが染み入っていくような気がしました。
男の子が飲み終わると、お兄さんは再び男の子に傘を渡して、ココアを注いでくれました。
魔法瓶に入っていたココアを男の子が全て飲んでしまうと、
「元気になったかな?」
お兄さんはそう言いました、お兄さんの言葉に男の子はこくこくと頷いて、
「ありが…とう…」
途切れ途切れに言いました。
「これで、もう少し、頑張れるかな?」
男の子は一生懸命に頷きます。
「いい? よく聞くんだ」
お兄さんは片手を男の子の肩に乗せて、言いました。
「この先をずーっと行くと、花屋がある。大きな看板が出ているからすぐにわかる。その裏に行くと、温室があるんだ。そこの温室は今日は、鍵がかかっていない。そこの一番奥に行くと、大きな布が沢山重なっているところがあるから、今日はそこで寝るといい」
男の子は真剣な顔でお兄さんの言うことを聞いています。
「明日、太陽が昇ったら、すぐにそこを出るんだ。そしたら、公園にある噴水の前に行く。そしたら、君は長い金髪の男の子に出会う。あとは、その子の言う通りにするんだ。いいね?」
「…そうしたら、幸せになれる?」
お兄さんはしばらく、何も言いませんでした。
「正直に言うよ、辛い日が、続いていくんだ。とても長い間」
「………」
男の子は泣きそうな顔をして下を向いてしまいました。
「でもね。これだけは、言える。ずっと待っていれば、君は絶対に幸せになれる」
「本当?」
男の子は顔をぱぁ、と明るくさせて訊きました。
「うん、とっても素敵な人に出会えるから。
…その人に出会うまでの長い間、君は決して幸せではないかもしれない。とても辛い思いをするかもしれない。それでも……。どんなに辛い思いをしても、悲しい思いをしても、それでも、何百回でも、何千回でも、何万回でも出会いたくなるような、そんな人に君は出会うんだ。…とても素敵な人に」
「優しい、人?」
「うん。頭がとてもよくて、優しい人…でも、嘘つきなんだ」
「嘘つきなの?」
「そうだよ。でもね、優しすぎて、自分の嘘に傷ついてしまう人なんだ。だから、その人が君に嘘をついても、許してあげて」
「その人に会えたら、本当に幸せになれるのかな?」
「大丈夫。君は世界で一番幸せになれる。保障するよ。…でもね、もし、その人に会う道を選びたくないのなら…、君は明日金髪の男の子に会わなければいい。…その後、君がどうなるかか、僕にはわからない。でも、僕が言った、君を世界で一番幸せにしてくれる人には、会えないよ。それだけは言える」
「…僕、頑張る! その人に出会えるように頑張るよ」
お兄さんの口元が優しく微笑むのが、男の子から見えました。
「さぁ、行って。今日は安心して眠るといい。君が起きるまで、誰も来ないから。ゆっくり、お休み」
お兄さんが言うと、男の子は嬉しそうに笑って、走って行きました。
* * *
男の子は温かい温室の隅で、眠っていました。
そこに静かに、男の子にココアをあげたお兄さんが近づいて行きます。
お兄さんは、男の子の傍でフードをとって、しゃがみました。
「兄さん、この子を…よろしくお願いします。…この子もきっと、あなたを守るから。
…だからそれまでどうか、優しい嘘をついてあげてください。最後まで、暖かい夢を見せてあげてください。
僕は……、本当に、それで幸せだったから。…同じ生を何度繰り返してもいいと思えるぐらいに。
…でも…。
出来れば、この子には…。僕よりもう少し長く、兄さんの傍にいさせてあげてほしい、な…。本当は僕だって兄さんを独りで残して逝きたくは、なかったから……」
お兄さんは、自分の髪と同じ色の男の子の髪を撫でながら、
「兄さんを、しっかり守るんだよ。出来たら、僕よりも…、もっと、もっとしっかり、兄さんを守ってね…。兄さん、本当は寂しがり屋だから。もし、兄さんを独りにしない道を見つけられたら、その道を選ぶんだ。…僕には、その道は見つけられなかったけれど。…頑張るんだよ」
静かに言いました。
「そうしたら、ひょっとしたら……夢は、夢じゃなくなるかもしれないから」
男の子と同じ髪の色をしたお兄さんは、ゆっくりと立ち上がると、目を閉じました。
するとお兄さんの姿は、やがて月明かりの中に消えて行きました。
次の日の朝。
男の子は、幸せになれる日のことを夢見ながら、街を駆け抜けていきました。
戻る
終
BGM:11文字の伝言(ピアノver)
つぶやいてみる。
19話の哀しいこと。
後ほど考察でも詳しく書こうと思いますが、それは、ロロがルルーシュの想いを知らないまま死んでしまっていること。ロロは、ルルーシュがロロの欲している感情を持っていないことに気付いていた。だから、ロロにとってはルルーシュが作ってくれた時間(=虚構)こそが本当に大事だった。だからこそ、最後までルルーシュに嘘をついて欲しいと望んでいた。ロロが死ぬ直前に、ルルーシュがその願いに応えたことで、ロロは夢を見たまま逝くことが出来た。それは、ロロにとっては幸せなことだったのだと思います。
…でも、本当はロロだって、ルルーシュに愛されたかったんだと思います。嘘の中でも夢の中でもなく。
その望み(ルルーシュがロロを弟として認める)が叶ったのは、ロロの死後……。
その悲しみが15秒版予告編のルルーシュの「なぁ…」にあるのかな、と思います。
そんな哀しい物語であっても、きっとロロはルルーシュに出会う物語を選ぶのだろうなぁ…。
何百回でも。
何千回でも。
何万回でも。
例え、無限に繰り返されても。
それでも………。
続いていく話
ある所に、小さな男の子がいました。
男の子には、一緒にいてくれる人が誰もいませんでした。それでも、男の子は独りきりでなんとか生きてきました。
ある冬。とても、寒い夜でした。せっかく見つけた住処も、今朝追い出されてしまったので、男の子には何処にも行く所がありません。
男の子はお腹をすかせていましたが、食べるものは何も持っていませんでした。
男の子は夜の街を、とぼとぼと宛てもなく歩いていきます。立ち並ぶ家の中からは、暖かい光と幸せそうな声が漏れてきました。
男の子が道を歩き続けると、やがて空から白い雪が降ってきました。
…お腹がすいた。
…寒い。
ただそれだけを考えながら、男の子は道を歩き続けました。
街の外れに来てしまうと、男の子は疲れ切ってしまっていて、降り積もる雪の中に倒れてしまいました。
男の子はなんだかとても眠くなってしまって、そのまま目を閉じてしまおうとしました。
…もう、寒いのも、お腹がすくのも嫌だ。
眠ってしまえば、もう辛い想いをしなくてもいいのだと、男の子は思っていたのです。
その時でした。
「眠ってはいけないよ」
優しいお兄さんの声がして、男の子は目を開けて、倒れたまま声のした方を見上げました。
そこに立っていたお兄さんは、長いコートを着ていて、フードを目深にかぶり、片手に傘を持って男の子に雪がかからないようにしてくれていました。
男の子が何も言えないでいると、お兄さんはしゃがんで言いました。
「立って。…少し、傘を持っていてほしいんだ」
お兄さんの優しい声がとても暖かくて、男の子は、頑張って立ち上がりました。
男の子はお兄さんから傘を受け取って、自分とお兄さんに雪がかからないように持ちました。
「ちょっと、待っていてね」
お兄さんは、そう言うと肩からかけていた鞄をあけて、中に入っていた魔法瓶を取り出しました。お兄さんが魔法瓶のふたをあけると、湯気と共にとても甘い香りがしました。お兄さんは魔法瓶の蓋に中の飲み物を入れると、
「はい、傘と交換だよ」
そう言って、飲み物を男の子に差し出しました。
男の子は傘をお兄さんに渡して、飲み物を受け取ります。
受け取った時、冷え切った指にじんじんと温かさが伝わっていきました。
飲み物は、温かいココアでした。男の子がゆっくりとそれを飲むと、身体中に温かさが染み入っていくような気がしました。
男の子が飲み終わると、お兄さんは再び男の子に傘を渡して、ココアを注いでくれました。
魔法瓶に入っていたココアを男の子が全て飲んでしまうと、
「元気になったかな?」
お兄さんはそう言いました、お兄さんの言葉に男の子はこくこくと頷いて、
「ありが…とう…」
途切れ途切れに言いました。
「これで、もう少し、頑張れるかな?」
男の子は一生懸命に頷きます。
「いい? よく聞くんだ」
お兄さんは片手を男の子の肩に乗せて、言いました。
「この先をずーっと行くと、花屋がある。大きな看板が出ているからすぐにわかる。その裏に行くと、温室があるんだ。そこの温室は今日は、鍵がかかっていない。そこの一番奥に行くと、大きな布が沢山重なっているところがあるから、今日はそこで寝るといい」
男の子は真剣な顔でお兄さんの言うことを聞いています。
「明日、太陽が昇ったら、すぐにそこを出るんだ。そしたら、公園にある噴水の前に行く。そしたら、君は長い金髪の男の子に出会う。あとは、その子の言う通りにするんだ。いいね?」
「…そうしたら、幸せになれる?」
お兄さんはしばらく、何も言いませんでした。
「正直に言うよ、辛い日が、続いていくんだ。とても長い間」
「………」
男の子は泣きそうな顔をして下を向いてしまいました。
「でもね。これだけは、言える。ずっと待っていれば、君は絶対に幸せになれる」
「本当?」
男の子は顔をぱぁ、と明るくさせて訊きました。
「うん、とっても素敵な人に出会えるから。
…その人に出会うまでの長い間、君は決して幸せではないかもしれない。とても辛い思いをするかもしれない。それでも……。どんなに辛い思いをしても、悲しい思いをしても、それでも、何百回でも、何千回でも、何万回でも出会いたくなるような、そんな人に君は出会うんだ。…とても素敵な人に」
「優しい、人?」
「うん。頭がとてもよくて、優しい人…でも、嘘つきなんだ」
「嘘つきなの?」
「そうだよ。でもね、優しすぎて、自分の嘘に傷ついてしまう人なんだ。だから、その人が君に嘘をついても、許してあげて」
「その人に会えたら、本当に幸せになれるのかな?」
「大丈夫。君は世界で一番幸せになれる。保障するよ。…でもね、もし、その人に会う道を選びたくないのなら…、君は明日金髪の男の子に会わなければいい。…その後、君がどうなるかか、僕にはわからない。でも、僕が言った、君を世界で一番幸せにしてくれる人には、会えないよ。それだけは言える」
「…僕、頑張る! その人に出会えるように頑張るよ」
お兄さんの口元が優しく微笑むのが、男の子から見えました。
「さぁ、行って。今日は安心して眠るといい。君が起きるまで、誰も来ないから。ゆっくり、お休み」
お兄さんが言うと、男の子は嬉しそうに笑って、走って行きました。
* * *
男の子は温かい温室の隅で、眠っていました。
そこに静かに、男の子にココアをあげたお兄さんが近づいて行きます。
お兄さんは、男の子の傍でフードをとって、しゃがみました。
「兄さん、この子を…よろしくお願いします。…この子もきっと、あなたを守るから。
…だからそれまでどうか、優しい嘘をついてあげてください。最後まで、暖かい夢を見せてあげてください。
僕は……、本当に、それで幸せだったから。…同じ生を何度繰り返してもいいと思えるぐらいに。
…でも…。
出来れば、この子には…。僕よりもう少し長く、兄さんの傍にいさせてあげてほしい、な…。本当は僕だって兄さんを独りで残して逝きたくは、なかったから……」
お兄さんは、自分の髪と同じ色の男の子の髪を撫でながら、
「兄さんを、しっかり守るんだよ。出来たら、僕よりも…、もっと、もっとしっかり、兄さんを守ってね…。兄さん、本当は寂しがり屋だから。もし、兄さんを独りにしない道を見つけられたら、その道を選ぶんだ。…僕には、その道は見つけられなかったけれど。…頑張るんだよ」
静かに言いました。
「そうしたら、ひょっとしたら……夢は、夢じゃなくなるかもしれないから」
男の子と同じ髪の色をしたお兄さんは、ゆっくりと立ち上がると、目を閉じました。
するとお兄さんの姿は、やがて月明かりの中に消えて行きました。
次の日の朝。
男の子は、幸せになれる日のことを夢見ながら、街を駆け抜けていきました。
戻る
終
BGM:11文字の伝言(ピアノver)
つぶやいてみる。
19話の哀しいこと。
後ほど考察でも詳しく書こうと思いますが、それは、ロロがルルーシュの想いを知らないまま死んでしまっていること。ロロは、ルルーシュがロロの欲している感情を持っていないことに気付いていた。だから、ロロにとってはルルーシュが作ってくれた時間(=虚構)こそが本当に大事だった。だからこそ、最後までルルーシュに嘘をついて欲しいと望んでいた。ロロが死ぬ直前に、ルルーシュがその願いに応えたことで、ロロは夢を見たまま逝くことが出来た。それは、ロロにとっては幸せなことだったのだと思います。
…でも、本当はロロだって、ルルーシュに愛されたかったんだと思います。嘘の中でも夢の中でもなく。
その望み(ルルーシュがロロを弟として認める)が叶ったのは、ロロの死後……。
その悲しみが15秒版予告編のルルーシュの「なぁ…」にあるのかな、と思います。
そんな哀しい物語であっても、きっとロロはルルーシュに出会う物語を選ぶのだろうなぁ…。
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現在のお礼SS:ロロルルロロ一本。
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