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「誓イ」ノ行方 (3)
「…幽霊、だって?」
夕暮れの小学校の教室で、スザクは集まっていたクラスメイト達に訊いた。帰宅しようとした時、その集団から「幽霊がでたんだ」という声が聞こえたのだ。真夏でもあるまいし、この寒いのに怪談かよ、と思っていたが、なんとなく気になって口を挟んでみたのだ。
一匹狼で恐れられているスザクに話しかけられて、クラスメイト達はぎょっとしたようだが、話す相手を一人でも多く求めていたらしいクラスメイトは、一気にスザクに話した。
「ほら、枢木道場があるだろう? あそこのあたり…夕方になると、頭と肩から血を流した男の子の幽霊がでるって。肌も青白くて、不思議な目の色をしてて…。お稽古の帰りに見た奴がいるって」
「ふぅーん。それでそいつ、何かしてきたりするのか?」
「ううん。ただ、すごく冷たい目でこっちを見て、それで消えちゃうんだって」
怖いねー、と互いに目を見合わせるクラスメイト達の言葉を話半分に聞きながら、スザクはどうやら自分を嫌っているらしい少年の顔を思い浮かべた。血のように赤い帽子をかぶって、外に飛び出していく少年の姿を。
もしかしなくても、あいつなんじゃねーの。とスザクは思っていた。
* * *
スザクが幽霊の話を聞いた次の休日、この時期にしては珍しいぽかぽかとした暖かい陽気に包まれながら、道場近くの石階段で、スザクは買い物帰りのルルーシュと二人で話をしていた。
「確かに、変だよな」
スザクは腕を組んで言った。目の前にいるルルーシュの顔は、完全に疲れ切っている。いつもスザクの前では強がろうとするというのに、そのかけらも見せない。
ルルーシュの弟であるロロが、日本に来て以来、朝に寝て、午後三時に起きて、外に出て行ってしまうのだという。そして夜通し起きて、また朝、寝るのだ。
完全な昼夜逆転生活だ。
それだけならまだいい。ルルーシュの話によれば、ロロは全く喋らず、完全にルルーシュを無視しているという。
スザクにしてみれば、ロロといえば、午前中に「土蔵」に行くといつも眠っていて、たまに夕方に見かけると、いつもこの世に存在しない人間のような瞳でぼんやりとしていたから、元々そうなのかと思っていた。だが、ルルーシュに言わせれば、確かにロロは一人遊びが好きな方ではあったが、日本に来る数ヶ月前まではルルーシュを無視することなど絶対になかったという。昼夜逆転の生活を送るようになったのは、日本に着てからなのだそうだ。
ロロの健康の為にも朝型の生活に戻したいし、またロロと話せるようになりたい、だがその解決方法が全く思いつかない……、ルルーシュはスザクにそう話した。
「君に相談したところで解決できるとは思わない。…でも話していたら何か思いつくかと思って」
「……なんでそうやって、いちいちつっかかってくるんだ?」
疲れた顔をしているから少しは心配していたというのに。
スザクがむっ、として言うのを無視して、ルルーシュは考えこんでいた。
「もう、お前の弟が朝寝ようとしたら、ぶん殴ってでも起こしておくしかないんじゃないか? なんとか夜まで起こしておけば、嫌でも眠くなって、夜に寝るだろう?」
スザクは思いついたことを言ってみた。
「…ロロの方が、力が強い。本気で抵抗されたら確実に僕が負ける」
確信して言うルルーシュに、
「兄貴弱ぇーな…」
スザクは脱力しながら、呆れたように言った。
「うるさい。戦力を客観的に、正しく把握しているだけだ」
はいはい、と言いながらもスザクも一緒に考える。
「さっきの作戦に俺が参加するとか」
「君が?」
「俺とルルーシュ二人がかりなら、なんとかなるだろう」
「それは…確かに効果はあるかもしれない。…でも、最終手段だな」
「なんでだよ?」
「ロロは…家族以外の誰かに触られるのが本当に嫌いなんだ。それだけで関係に亀裂が入りそうなぐらいに。挨拶の握手だって、嫌で嫌で仕方ない筈なんだ」
「っていうか、もう入ってんじゃねーの? 亀裂」
言ってしまってから、ルルーシュの顔色がみるみる変わっていくのを見て、スザクはしまった! と思った。
「悪い、言い過ぎた…」
珍しくスザクが取り繕うように言うと、しばらくルルーシュは俯いた。
「毎日、笑ってたんだ…」
ルルーシュがぽつり、と言った。
「ん?」
「僕から探さなくても、ロロがいつも僕を見つけて、傍にいた。『にいさん』って言って…ついてきてた。…いつだって、笑ってたんだ…」
ルルーシュは頭を抱えた。
「あの頃に戻りたいのに…。どうすれば戻れるのか…いくら考えてもわからないんだ…。下手に何かすればロロがいなくなりそうで…」
「おいおい、大丈夫か?」
スザクは思わず駆け寄った。
ブリタニア人を恨む日本人達からどんなに罵倒されても、痛めつけられても、いつだって弱さを露ほども見せなかったルルーシュが、こんな風になるなんて、思ってもみなかった。
それ程に、ロロが心配で、大事なのだろう。
どうすればいいのか、一緒に考えてやりたいが、ロロのことを一番よく知っているルルーシュにわからないのに、自分にわかるはずもない。
と、すると。
スザクに出来ることは一つしかなかった。
頭と肩から血を流す真冬の幽霊本人に、話を聞きにいくのだ。一対一で。
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