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「誓イ」ノ行方 5
買い物から帰ってきたルルーシュが怪我をしていたのを、何度も見たことがある。
傷ついたルルーシュをじっと見ていると、その度にルルーシュは、
「大丈夫だよ、ロロ。なんともないよ」
と、ロロを安心させるように言った。
そんなルルーシュのことが心配で買い物についていこうとすると、「ロロは来なくていいよ」と言われしまい、泣きながら枢木道場から少し離れた森の奥にある自分の場所に走っていったことがある。兄の役に立ちたいのに、傍にいさせてもらえない寂しさに、ロロは視界を歪ませながら、ナイフを投げ続けた。
僕ハタダ、兄サンヲ守リタイダケナノニ………。
ヤッパリ兄サンハ、僕ノコトナンテ………。
ある日、いつも通り午後三時に起きると、ナナリーが何かそわそわとしていた。
何かあったのだろうかと、ナナリーの傍に行くと、ロロの気配に気づいて、ナナリーは言った。
お兄様が買い物に行ったきり、ずっと、帰ってこないのです。
その言葉を聞くとすぐに、ロロは「土蔵」を飛び出して、走った。
その日はまだ残暑の厳しい時で、強い日差しに晒されながら、ロロは必死にルルーシュの姿を探した。
にいさん、にいさん…、とそれだけしか頭にない中、ロロの耳にかすかにルルーシュの声が届いた。
(兄さん!)
ルルーシュの姿をようやく見つけた時、その隣に枢木スザクの姿があったのを見て、ロロは思わず物陰に隠れた。
二人の声が聞こえてくる。ちらりと二人を見ると、枢木がルルーシュの傷口に消毒液の含まれたガーゼを当てていた。
俺に一声かければついてくって言ってるだろう! と怒鳴る枢木に、ルルーシュが何かを言い返す。
話を聞いていると、いくつかのことがわかった。
一人で買い物に行くルルーシュが何度か日本人の子ども達から、殴る蹴るの暴行を受けていたこと。そして、見かねた枢木がそいつらを追い返していたこと。
ボクニハ ナニモ オシエテクレナカッタノニ。
ドウシテ ボクハ 枢木ガ知ッテイルコトヲ 教エテモラエナカッタノダロウ
「にい、さん……」
そう口にすると、何故か堪らなく哀しく、寂しくなってきた。ルルーシュの傍に行きたい。だが、少し足を伸ばせばそこにルルーシュがいるのに、枢木と二人の空間に自分が行っていけない気がした。
ほんの少しまで、兄さんと枢木は仲が悪かった筈なのに、なんで。
ロロは二人に気づかれないように、その場から走り去っていった。
* * *
日本で初めて年を越してから、少し経ったある深夜。
ルルーシュはふと、目を覚ました。周りを見回すが、ロロがいない。気配もしない。ルルーシュはナナリーを起こさないように、忍び足で部屋を出た。
一階に降りるが、やはりロロの姿はない。
まさかこの時間に外にいるのではないか…。そう思ってコートを取りに二階戻ってから、ルルーシュは外に出た。
すると、椅子に丁度いいぐらいの大きさの石の上に、ロロが座っていた。
青白い月明かりに照らされて、ロロの顔はいつも以上に、人形めいて見えた。
「ロロ……」
名前を呼ぶが、ロロはただぼんやりと宙を見ているだけで、ルルーシュの方を見ようとはしなかった。
「ロロ」
もう一度、名を呼ぶ。やはり反応はない。
「ずっと、ここにいたのか」
ロロは何も返してはくれないが、ルルーシュは話を続けた。
「風邪、ひくよ」
ルルーシュはロロの手を取った。拒まれるかもしれない、と思ったが、ロロは手を引っ込めることはしなかった。
「…冷たくなってる」
ルルーシュの言葉に、ようやくロロは目を動かして、ルルーシュにとられた自分の手を見た。
「部屋に戻ろう。…起きてても、いいから」
ルルーシュが言うと、ロロはしばらくルルーシュの瞳を見てから、頷いた。
ロロと手を繋いだまま部屋に戻りながら、嫌われているわけではないのかな、とルルーシュは思った。
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