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願いは、一つしか叶わない。
選ばれた願い.A
― BIRTHDAY CARD ― (3)
― BIRTHDAY CARD ― (3)
ロロを、ずっと、騙してきた。
ゼロレクイエムの計画を打ち明けた時、誰よりも激しく抵抗したのは、ロロだった。最後に、ゼロレクイエムの最終段階にロロを参加させない、という一言を告げた時、スザクが止めていなかったらロロは力任せにルルーシュに飛び掛っていただろう。それぐらいに怒り狂っていた。
なんとかロロが落ち着いた後、(ロロが落ち着くまで相当時間がかかった)ロロはルルーシュに一つの提案を口にした。ある条件を一つ認めてさえくれれば、ルルーシュの計画を認める、と。
ロロがゼロレクイエムを認める条件。それは、「ゼロレクイエムの向こう側」へとロロも道連れにすること。そんなことは出来ない、とルルーシュは反射的に叫びそうになった。だが、ロロに計画を呑ませる為に、ルルーシュは、一度はその提案をしぶしぶ受け入れたふりをした。
しかし、ロロと約束しておきながら、ルルーシュの心は揺れていた。
ロロを連れて行くのか、行かないのか。
それはロロに計画を打ち明ける前から自分に問い続けた、難問。
連れて行きたい、と己の本能が叫んだ。
そして、連れて行ってはならないと叫んだのも、己の本能だった。
愛しているから、どこまでもずっと一緒にいたいから、連れて行きたい。もう己の一部となってしまっているロロと引き裂かれる痛みなど、この身に受けたくはない。
愛しているから、幸せになってほしいから、連れて行けない。人として、“ルルーシュ”という存在の傍に在ること以外に、幸せが存在するのだと、人として扱われてこなかった弟に知って欲しかった。
その両方が、心の底からの慟哭であり願いだった。
だが、願いは、どちらか一つしか叶わない。
そしてルルーシュは、選んだ。
ロロに、人として、幸せになって欲しいと。
* * *
スザクやジェレミアにゼロレクイエム後のロロのことを頼んだ(スザクには散々罵倒されたが)。後は、ロロにギアスをかけるだけだった。
忙しい日々が続いたから、たまにはゆっくり話でもしよう、と言ってロロを自室に呼べば、余程ルルーシュと話せるのが嬉しいのか、ロロはうきうきとした様子で部屋に入ってきた。
誰も見ていないのをいいことに(ドアの外ではスザクが張り付いているわけだが)ベッドの上で、無邪気に戯れながら、他愛のない話を続けた。
こうやって、永遠に二人で戯れていられたなら、どれほど幸せなのだろう。
そう思った数分後に、穏やかな時間は終わりを告げていた。
互いに上半身を起き上がらせた時、ルルーシュはロロの隙をついて、
「俺が『以上だ』と言うまでの…これから言う命令を…実行しろ」
コンタクトを外してそう命じた。
ロロはすぐに目をぎゅう、と閉じて、ルルーシュのギアスに抗うように身を震わせた。ロロの手が自分自身を縛り付けるように肩に爪を立てる。
やがて唐突にロロの身体の震えが収まったかと思うと、ロロはルルーシュに抱きつきながら、
「うん、兄さんの言うことなら、なんでも聞くよ。何?」
と嬉しそうな声で訊いてきた。
ルルーシュはロロを抱きしめながら、指先をロロの髪に絡める。
愛しい弟に、遂にギアスを使ってしまったという罪悪感に駆られながらもルルーシュは命令を下した。
「ゼロレクイエムの計画に対して、お前は反対の意見を持ってはいけない」
「うん」
従順な肯定の返事がルルーシュに現実を知らしめる。自分が今、弟の意志を捻じ曲げているのだと。
「俺がスザクに刺された後は…俺のことは全部忘れろ」
「うん」
だが、たとえこれが、ロロの意志をねじ曲げるものであっても、それでも。
「その時一緒に、暗殺者だったことも、忘れろ。ギアスに関することも、全て」
「うん」
本当はロロと共に行きたい。だが、その願いが叶ってしまった時、もう一つの願いは叶わない。
ルルーシュが選んだ願いは、ロロが人として生きて幸せになること。
ずっと傍にいること。
別れること。
ロロを愛しているという想いは同じなのに、何故自分は、真逆の望みを抱いてしまうのだろう。願いは、一つしか叶わないというのに。
愛しているからこそ、この身を世界に捧げる瞬間の果てまで、傍にいて欲しいと願う。
愛しているからこそ、世界の憎しみの中心となる自分から遠いところで、笑っていて欲しいと願う。
ロロの顔を見るたびに、二つの願いに心を引き裂かれそうになった。
一緒にいて欲しい。
幸せになって欲しい。
心の底からロロの幸せだけを想えたなら、どれだけ良かったのだろう。どうするかはもう決めてしまったけれど、ずっと傍にいたいという願いが消えてなくなってしまうわけではないのだ。
「そして…俺がお前にギアスを使った可能性を疑うな」
「うん」
兄として、自分がしなければいけないこと。それだけを考えろ。
兄として、ただ、弟の幸せだけを。
「…愛してるよ、ロロ。だから、…幸せになってくれ」
自分が傍にいられなくても、ロロが笑っていられるように。
「…今まで、支えてくれて、ありがとう」
どうか、どうか、幸せで。
「……以上だ」
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