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これは、僕の…
選ばれた願い.A
― BIRTHDAY CARD ― (4)
ブラインドの隙間から、朝日が入ってくる。んー、と声を出しながら天井に向かって伸びをしていると、ノックの音がした。C.C.は「入っていいぞ」と面倒そうに言ってから、部屋に入ってきたロロを見て興味深げに目を細めた。
「……ありがとう、C.C.」
C.C.に小箱を手渡しながら、ロロは無表情のまま言った。
「礼を言われている気がしないがな。…まぁ、いい」
C.C.はロロに渡された小箱を開いた。光情報を媒体にするルルーシュのギアスの働きを阻害するコンタクトだ。
「上手くいったようだな」
C.C.の言葉に、ロロはこくりと頷いた。
「兄さんは…僕がギアスにかかったと思い込んでる」
ゼロレクイエムを行う前に、必ずルルーシュがギアスを使ってくるだろうとロロは予想していた。
ゼロレクイエムの詳細を聞き、計画を呑む条件を提示した後、ロロはルルーシュの返事に嘘があることに気づきながらも、納得したフリをした。
その少し後、「僕は兄さんの傍に、ずっと一緒にいて、いいんだよね?」と不意打ちを食らわせる形で訊いた時、ほんの一瞬だけルルーシュの顔に浮かんだ苦悶の表情に、答えは全て描かれていた。
嘘つき。兄さんの、大嘘つき。
大っ嫌いだ、とルルーシュに向かって叫びそうになった。傍にいたいと願う自分の想いをわかってくれない、けれど愛しくてたまらない兄に。
ロロには願いが二つあった。そのうちの一つは、ルルーシュがゼロレクイエムの向こう側にロロを連れて行かないと決めてしまっている時点で、もう叶わないと確定している。
一緒に行きたい。だが、その願いがルルーシュを苦しめるというのならば、自分はその願いを箱の中にしまって、鍵をかけるしかない。
そしてルルーシュにギアスを使われてしまえば、もう一つの願いも叶わなくなってしまう。
本当の願いが叶わないというなら、せめて残されたもう一つの願いだけは、なんとしてでもロロは叶えたかった。
ロロは賭けにでた。C.C.を味方につけることにしたのだ。だが小手先でC.C.をどうにか出来るとは思えなかったから、ロロは正直に全てC.C.に話した。自分の願いを、望みを。
ルルーシュの共犯者であるC.C.が、ルルーシュの害となることを行う筈はない。C.C.がロロに協力したのは、ロロの願いが、「ルルーシュの願いを、自分の意志で叶えること」だったからだ。
ルルーシュの願いを、自分の意志の関係ない所でギアスに操られて実行するのではなくて、しっかり兄の願いを胸に刻んだ上で、ルルーシュの記憶を持ったまま、痛みに耐えながらも自分の意志で歩いていきたい。それが、ロロの望みだった。そしてルルーシュがギアスをかけてくるその時にこそが、ルルーシュの本音を聞くことの出来る唯一のチャンスでもあった。
協力を求められた時、C.C.は訊いた。
『あいつの望み通り、全てを忘れて新しい人生を歩んだ方がいいんじゃないか?』
それはロロの想いの強さを知っているがゆえの、問いだった。ルルーシュを失った記憶を持ったまま、生きていくということが、この少年にとってどれほど辛いことになるのか。C.C.は案じていた。
『…愛しているから、兄さんの願いは絶対に叶えたい。…でもそれはギアスの力ではなく、僕自身の意志でなければいけない』
『導かれる結果は同じだろう? ただ、お前が辛い想いをするかしないか、…それだけの違いじゃないのか?』
ロロは首を振った。
『……僕は、ずっと誰かの道具だった…僕の意志は、兄さんがくれたんだ。だから、この命が終わるまで、自分の意志を大切にしたい。…どんなに辛くても、兄さんのことをずっと忘れない。…そして、僕の意志で兄さんの願いを叶えるんだ』
C.C.はその言葉を聞いた時、思わず「似ているな、お前達は」と言いかけた。互いを想い、愛し合うが故に、互いの気持ちを裏切る兄弟。だが、互いの本当の想いが叶ったからといって、それが二人の幸せになるかはわからない。だから自分に出来ることは、二人の選んだ願いを出来うる限り叶えてやることしか出来ないのだ。
C.C.は、礼だけ言って部屋を出ようと背を向けたロロに訊いた。
「本当に、いいんだな? 後悔、しないな?」
「しないよ。…だって…」
ロロはゆっくりと振り向いて答えた。
「これは、僕の…意志なんだから」
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