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選ばれた願い.A
― BIRTHDAY CARD ― (6)




 「二十歳の誕生日、おめでとう。僕らの写真家の傑作を送ります」と書かれたメッセージカードが、ルルーシュの元に送られてきた。メッセージカードの端には、「貴方の友人より」と三つ書かれており、三つそれぞれが別の筆跡だった。差出人の名前は無いが、おそらくスザク、アーニャ、ジェレミアの三人からだろう。
 ふっ…と口元に笑みを浮かべてから、メッセージカードと共に送られてきたデータを、ルルーシュはパソコンで開く。
 中に入っていたのは全て画像ファイルだった。おそらくはアーニャが撮ったものだろう。
 その画像を一つ、一つと見ていく内に、パソコンを操作するルルーシュの手が小刻みに震え、やがて、その手は額にやられた。
 視界がぼやけて、画面が見えない。
 際限なく流れてくる涙はいくら拭ったところで意味などなかった。

 ジェレミアと一緒にオレンジを収穫しているロロ。
 生クリームをホイップしているロロ。
 バイクのメンテナンスをしているロロ。
 斜めになった画面に向かって、慌てて手を伸ばそうとしているロロ。(撮影者が転びそうになっていたのだろうか?)

 その全てで、ロロが笑っていた。
 
 喜ばなければいけないのに、どうして涙が止まらないのだろう。声を押し殺して泣きながら、ルルーシュは涙を拭い、なんとか画面を瞳に写しながら、他の画像を開いていく。
 その画像全てに散りばめられたロロの笑顔に、ついにルルーシュは声すらも抑えられなくなった。

 嬉しいのだ。嬉しくてたまらないのに、どうして、こんなにも寂しいと感じてしまうのだろう?
 どうして、また、一目会いたいと願ってしまうのだろう?
 どうして、また、声が聴きたいと願ってしまうのだろう?
 どうして、もう一度抱きしめたいと願ってしまうのだろう?
 願いは一つしか叶わない、と口にしたのは自分自身なのに。
 “ルルーシュ”という存在を必要としない世界でロロに幸せになってほしい、と願ったのは自分自身なのに。

 自分という存在のないところで、ロロが幸せに笑っているのが、こんなにも嬉しくて、寂しくて、哀しい。

 もうロロに必要とされることない自分に残された役目があるとするならば、ロロがこれからも笑って生きていけるように、自分という存在をロロの前に現さないことだけだ。大切な願いを祈るように、胸に抱いて。

 ロロが笑っていてくれるなら、これからの孤独にも耐えられる。
 短い間でも、ロロの兄としていられたことを誇りに思っていられる。

 ルルーシュは、机の引き出しを開けて、二通の手紙をだした。それは、送られることのなかった、二枚のバースデイカード。
 読んで欲しい相手に永遠に読まれることはないというのに、字体も紙も、凝ったデザインになっていた。届くこともないのに、ルルーシュが時間をかけて作ったのだ。

 あと何回、自分は届くことのないバースデイカードを書くことが出来るのだろう。
 今、自分が願うのは、届かないバースデイカードを書くことの出来る回数が、限りなく多いこと。そして、ロロの行く先に、笑顔が絶えないこと。
 
 いつか愛しい人の命が大地へと還るまで、毎年必ず、届くことのないバースデイカードを書き続けていよう。
 生まれてきてくれて、ありがとう。出会えてよかったという想いをのせて。



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 ロロが生きている+ゼロレクイエムが本当にルルーシュ死亡の場合、ロロがゼロレクイエムを阻止にかかると思うので、絶対にこの二つの条件が共存することはなかったのだろうなぁ…と思います。
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現在のお礼SS:ロロルルロロ一本。
効能:管理人のMP回復。感想一言頂けるととても喜びます。
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