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*小説一巻を参考に捏造した 幼少時代のロロ→ルルです。
守ル者
(人が、たくさん、いる。でも皆、僕とは関係ない)
まだ十歳にも満たない程の少年、ロロは、空港のロビーにある椅子に座って、行き交う人々の群れをぼんやりと眺めていた。
次の任務に行く為、ロロの搭乗手続きを、今、見知らぬ大人がやっている。
大人しく待っていろよ、なんてロロに向かって言ったことから、おそらく、ロロのことを、あの大人は只の子どもだと思っているのだろう。(組織は一枚岩ではない)
ロロが他の子どものように何処かににふらりといなくなる事など有り得なかった。
(だって、どこに行ったって、同じだし。行きたい所もないし)
レジャーシーズンのせいか、家族連れの姿が多い。時折迷子の知らせが空港に響いていた。
親に手を引かれながら、これからの旅行に期待に胸を膨らませて、楽しそうに笑う子ども達がロロの前を通っていく。
ロロは目を伏せた。
家族で旅行に行く、というのはそんなに楽しいものなのだろうか。
自分は任務であちこちに飛び回っているが、楽しいと感じたことは一度もない。
何故、彼らはあんな風に笑っているのか。
考えれば考える程分からなくなる。
ロロの肩が、ぴくりと震えた。暗殺者として研ぎ澄まされた感覚が、殺気に近い気配を感知したのだ。
ロロはその気配がした方を見る為、ゆっくりと顔を上げる。
ロロからだいぶ離れた壁際に、車椅子に乗せられた少女がいた。柔らかそうなウェーブの、薄い茶色の髪を持つ少女。ロロは更に視線を上げる。
殺気に近い気配は、車椅子の少女の後ろにいる黒髪の少年から発せられていた。
少年の紫の瞳は、隙なく周囲を警戒していた。行き交う人々の全てが敵であると言わんばかりの、異様な敵意の視線。
とりあえず、自分に危険を及ぼす存在ではなさそうだ、とロロは判断して、車椅子の少女と、黒髪の少年の観察を始めた。
もともと黒髪の少年は、周囲の全てを警戒するという事には慣れていないのだろう、とロロは思う。あのような警戒の仕方では、警戒している方がすぐに疲れてしまう。少なくとも、ロロが相手にしてきた警戒のプロ達は、あれ程までに殺気をばらまいてはいなかった。
ならば、何故そんな少年があれ程までに、周囲を警戒しているのだろうか。
ロロが考えていると、車椅子の少女と黒髪の少年の前に、背の高い男性が現れた。
親だろうか。とロロは思ったが、男性と言葉を交わす間も黒髪の少年の警戒は解けない。
一体どのような状況なのだろう、とロロが思った時、男性が少女の方に手を伸ばした。
瞬間。少年の殺気が膨れ上がったのが、ロロにはわかった。
「触るな!!」
少年の鋭い声が、響いた。周囲の人々が立ち止まって注視してしまうような声に、ロロは目を丸くする。
男性から少女を守るように、黒髪の少年は車椅子を反転させて、押し始める。
遠ざかっていく少年の姿を目で追いながら、ロロの頭の中に焼きついた映像が再生を始める。
触るな! と叫んだ瞬間に、ロロに見えた黒髪の少年の瞳。
そこにあったのは、何者をも、少女には近づかせない。少女は絶対に自分が守るという意志の力だった。
「行くぞ」
自分を「護送」するエージェントに声をかけられて、ロロは立ち上がった。
知らないエージェント。
知らない大人。
「護送」が済んだら、すぐに別れてしまう大人。
もし自分が襲われたとしても、この大人が、先程の少年のような瞳を見せることはないだろう。
いや。と、ロロは思う。
この大人だけではない。
誰も、誰も。
誰も、あのような意志の元で自分を守ろうとする者はいない。
ロロは後ろを振り返った。
黒髪の少年は相変わらず、殺気を隠さないまま、車椅子を押し続けていた。
車椅子の少女を、ロロはほんの少しだけ羨ましいと思った。
終
戻る
守ル者
(人が、たくさん、いる。でも皆、僕とは関係ない)
まだ十歳にも満たない程の少年、ロロは、空港のロビーにある椅子に座って、行き交う人々の群れをぼんやりと眺めていた。
次の任務に行く為、ロロの搭乗手続きを、今、見知らぬ大人がやっている。
大人しく待っていろよ、なんてロロに向かって言ったことから、おそらく、ロロのことを、あの大人は只の子どもだと思っているのだろう。(組織は一枚岩ではない)
ロロが他の子どものように何処かににふらりといなくなる事など有り得なかった。
(だって、どこに行ったって、同じだし。行きたい所もないし)
レジャーシーズンのせいか、家族連れの姿が多い。時折迷子の知らせが空港に響いていた。
親に手を引かれながら、これからの旅行に期待に胸を膨らませて、楽しそうに笑う子ども達がロロの前を通っていく。
ロロは目を伏せた。
家族で旅行に行く、というのはそんなに楽しいものなのだろうか。
自分は任務であちこちに飛び回っているが、楽しいと感じたことは一度もない。
何故、彼らはあんな風に笑っているのか。
考えれば考える程分からなくなる。
ロロの肩が、ぴくりと震えた。暗殺者として研ぎ澄まされた感覚が、殺気に近い気配を感知したのだ。
ロロはその気配がした方を見る為、ゆっくりと顔を上げる。
ロロからだいぶ離れた壁際に、車椅子に乗せられた少女がいた。柔らかそうなウェーブの、薄い茶色の髪を持つ少女。ロロは更に視線を上げる。
殺気に近い気配は、車椅子の少女の後ろにいる黒髪の少年から発せられていた。
少年の紫の瞳は、隙なく周囲を警戒していた。行き交う人々の全てが敵であると言わんばかりの、異様な敵意の視線。
とりあえず、自分に危険を及ぼす存在ではなさそうだ、とロロは判断して、車椅子の少女と、黒髪の少年の観察を始めた。
もともと黒髪の少年は、周囲の全てを警戒するという事には慣れていないのだろう、とロロは思う。あのような警戒の仕方では、警戒している方がすぐに疲れてしまう。少なくとも、ロロが相手にしてきた警戒のプロ達は、あれ程までに殺気をばらまいてはいなかった。
ならば、何故そんな少年があれ程までに、周囲を警戒しているのだろうか。
ロロが考えていると、車椅子の少女と黒髪の少年の前に、背の高い男性が現れた。
親だろうか。とロロは思ったが、男性と言葉を交わす間も黒髪の少年の警戒は解けない。
一体どのような状況なのだろう、とロロが思った時、男性が少女の方に手を伸ばした。
瞬間。少年の殺気が膨れ上がったのが、ロロにはわかった。
「触るな!!」
少年の鋭い声が、響いた。周囲の人々が立ち止まって注視してしまうような声に、ロロは目を丸くする。
男性から少女を守るように、黒髪の少年は車椅子を反転させて、押し始める。
遠ざかっていく少年の姿を目で追いながら、ロロの頭の中に焼きついた映像が再生を始める。
触るな! と叫んだ瞬間に、ロロに見えた黒髪の少年の瞳。
そこにあったのは、何者をも、少女には近づかせない。少女は絶対に自分が守るという意志の力だった。
「行くぞ」
自分を「護送」するエージェントに声をかけられて、ロロは立ち上がった。
知らないエージェント。
知らない大人。
「護送」が済んだら、すぐに別れてしまう大人。
もし自分が襲われたとしても、この大人が、先程の少年のような瞳を見せることはないだろう。
いや。と、ロロは思う。
この大人だけではない。
誰も、誰も。
誰も、あのような意志の元で自分を守ろうとする者はいない。
ロロは後ろを振り返った。
黒髪の少年は相変わらず、殺気を隠さないまま、車椅子を押し続けていた。
車椅子の少女を、ロロはほんの少しだけ羨ましいと思った。
終
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