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実は去年の切ない誕生日と、(2)
ルルーシュの誕生日の前日。ルルーシュがまだしばらくクラブハウスに戻らないことをしっかり確認してから、ロロはクラブハウスのダイニングでプレゼントの包装作業をしていた。テーブルには、完成した“プレゼント”と、ラッピングの為の道具が入った紙袋が置いてある。
ロロは瓶詰めの“プレゼント”を、紙袋から取り出した円柱形の薄紫の箱に慎重に入れ、緩衝材の位置を調整し蓋をしてから、濃い紫のリボンを結ぶ。
最初に出来たリボンの結び目はどう多めに見ても不恰好だったから、一度解いてから結び直す。
「……うーん……」
眉間に皺を寄せて唸りながら、色々な角度から結んだリボンを見てみる。正面・後ろ・横・上・斜め下。今度は、何処が具体的に悪いとは言えないが、バランスが良いとは決して言えないような気がした。
うーん、うーん、と悩めるロロは、なかなかに出来の良いリボンが形作られても、自分が設定した高すぎる及第点に届かないという理由で、何度も何度もリボンをするすると解いた。
解いて結び直してを何度か繰り返す内に、なんとかかなり良い形にリボンを結ぶことが出来たが、結ぶ・解くを繰り返し過ぎて、今度はリボンが皺になっていた。
それで納得のいくわけのないロロは(こんな皺になってるリボンなんて兄さんに渡せない!)、またしてもそのリボンを解いて、予備に買ってきた分のリボンを紙袋の中から取り出す。
今度は皺にならないように…とロロは緊張した面持ちで、慎重にリボンを結んでいく。
真剣勝負の末、繰り返した失敗のお陰か、新しいリボンでの挑戦は一度で成功した。
「…よしっ」
ラッピングの専門店に注文した(そんな店があるなんて初めて知った)、ロロが必死になって選んだ上品な薄紫色の円柱形の箱に、大きな形のいいリボンが映えている。ちなみに、中身もまた、数々の失敗の上でやっと出来た完成品だ。
「これなら……きっと兄さんも……!!」
思わず自画自賛を始めてしまいそうな程の出来栄えに、ロロはうっとりとしながら、やっと終わった作業に安心して、椅子の背もたれに身体を預けた。
いよいよ、明日がルルーシュの誕生日だ。
しかしプレゼントは出来たものの、明日の誕生日パーティーに関して、実はロロはノータッチだった。
『ルルーシュの誕生日パーティー? 毎年皆で盛大にやってるじゃない? 急にどうしたの? 今年は二人きりで祝いたいとか?』
大分前に、『今年の兄さんの誕生日、会長は何か計画してるんですか? …パーティーとか』とロロがミレイ・アッシュフォードに訊いた結果がこの返答だった。
なかなかに痛い所を突いたミレイの言葉だったが、そこで「そうです」と言ったところでやる気満々のミレイ・アッシュフォードを止められるわけがないので、ロロは曖昧な表情を浮かべて首を横に振っておいた。
誕生日パーティーがミレイ・アッシュフォードの手中にあることを理解した時、ロロは内心安堵していたのかもしれない。ルルーシュと二人きりで、誕生日を祝う……というのが理想ではあったが、それまでの準備を全て自分一人でやるのは、ロロのキャパシティを遥かに超えている。何しろ経験が足りな過ぎるのだ。プレゼントに専念出来て良かったのかもしれない。
しかしそれが、ロロがプレゼントに拘っている要因一つだとも言える。パーティーはミレイ主催になるのだから、せめてプレゼントだけは、自分で考えたものを…と。
プレゼントに専念すると決めた時、すぐにヴィレッタの元へと行けば良かったのだが、実際は、ヴィレッタに訊きにいった時点で、もうかなりルルーシュの誕生日は近づいていた。もっと早く訊きに行っておけば良かったと思いながらも、残された時間と、自分の能力を計りながら、何を作るのかは自分で決めた。
“プレゼント”を作る時、材料一つ一つを夢中になって調べ上げた。人生で初めて贈る誕生日プレゼントで妥協なんてしたくなくて、ルルーシュにばれない様にしながら選び抜いた材料を少しづつ集めた。
いざ実際に作るという段階になって、失敗続きで焦りもしたが、最終的には満足ゆく”プレゼント”が出来たとロロは思う。
「……間に合って良かった」
何処からも文句の出ようもないほどバランスの良い紫のリボンを目にしながら、ロロは安堵の息を漏らした。
嗚呼でも。
もう少し頑張って、兄さんの誕生日を兄さんと二人きりで…というのもやってみたかったな。
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