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実は去年の切ない誕生日と、(3)
早朝。
ルルーシュへ最初に「誕生日おめでとう!」と言葉を贈るのは、他の誰でもない自分の役目だ、とロロは息巻いていた。いつもよりだいぶ早めに起き、顔を洗って、運悪くついてしまっていた寝癖もしっかり直す。それから鏡の前で笑顔の練習をした。ちゃんと笑えてるかな、としばらく練習してから、傍から見たらさぞ滑稽だろうな、でもそう思いたければ思えばいいよ、と背後斜め上にある監視カメラに対しては投げやりな気持ちを抱いていた。
(だって、兄さんが今日最初に目にするのは僕なんだから、しっかり準備しないと)
満足行くまで見た目に気を配った後、兄さんもう起きてるかな、と逸る気持ちを落ち着かせながら、ロロはルルーシュの部屋のドアをほんの少しだけ開けて、隙間から中を覗いてみた。すると、窓から入る朝日を浴びながら、丁度ルルーシュがベッドで上半身を起こして伸びをしているのが目に入る。そんな動作すら絵になるなぁ、なんて見とれてしまってから、ロロはすぐに自分の目的を思い出し、
「兄さん、誕生日おめでとう!」
ドアを大きく開けて、弾けんばかりの笑顔でそう言った。
目覚めたばかりでまだぼんやりとしていたらしいルルーシュは目を丸くしてから、微笑んだ。
おいで、と言うように手を伸ばすルルーシュに誘われるままに、ロロがベッドの端に腰を降ろすと、
「ありがとう……ロロ」
ロロが蕩けてしまいそうな、砂糖菓子にも似たルルーシュの声がロロの鼓膜を震わせると同時に、ルルーシュの手がロロの頭を撫でた。起きたてのせいか、若干高めの体温が髪越しに伝わって、少し冷えていた頭に心地よい。かつては頭を撫でられるなんて、気持ち悪くて仕方がなかったのに、今では、こんなにも嬉しい。
「俺は本当に幸せ者だな」
そう言って、ルルーシュは当たり前のようにロロの額にキスを落とす。毎朝の日課のようになっているそれがあるたびに、ロロの心臓が跳ね上がっているのだとルルーシュは気づいているだろうか? つい頬を上気させてしまうロロの反応を楽しんでいるのだろうか??
額に口付けを落とされた時、条件反射で閉じてしまっていた瞼をロロがゆっくりと開くと、目の前にあるのはロロだけを愛おしげに見つめる、長い睫に縁取られた紫の透き通った双眸だった。たとえ毎朝のキスがちょっとした悪戯心からのものであったとしても、そんな瞳で見つめられたら許せてしまう。
(……ズルイよね)
目と目があった静謐で透明な時間の中で、自分の鼓動の音だけが妙に響く。
うるさいよ、と幾ら自分の心臓に苦情を申し立てても、先程まで自分の額に接していたルルーシュの唇が目に入っては、静まるものも静まるわけがなかった。
「兄さん……」
溢れ出て来る名前のわからない感情が、何かの形になりたがっていて、ロロは思わずそう口にしていた。
「ん?」
首を傾げるルルーシュにすら見とれてしまう自分は、きっと重症なのだろう。と、思いながらも、ロロはなんとか次の言葉を続ける。
「今日は、何もしなくていいからね。家事は全部僕がやるから」
好きだとか、大好きだとか、本当に口にしたい言葉を音にしてしまったら止まらなくなってしまいそうで、ロロは代わりの言葉を口にする。
「……落ち着かないな、それじゃあ」
苦笑するルルーシュに、今日一日ぐらい僕に全部任せて、だって今日は兄さんの誕生日なんだから! とロロが言えば、ルルーシュはよろしく頼むと言葉にする代わりに、ロロの髪をくしゃりとかき上げた。
もっと触れてほしいと願う、この感覚は、なんなのだろう。
柔らかな金色の陽光に包まれた優しい時間の中で、ずっとルルーシュと見詰め合っていたかったけれど、
「じゃあ、僕、朝ごはんの準備するから!」
ロロは立ち上がって、小走りに部屋を出た。ああ。あの人の為に、一生懸命プレゼントを作って本当によかったな、と隠せない微笑を浮かべ、誕生日パーティーの最後にプレゼントを渡す瞬間を思って希望を膨らませながら。
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