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ロロ→ルルな、5話の補完話です。
最終関門
信じて、いいのだろうか。
ミルクコーヒーを飲むロロの視線の先には、初夏の陽気の中、生徒会のメンバーと共にクルルギ・スザクと話をするルルーシュの姿があった。
彼を、信じて、いいのだろうか。
ルルーシュに命を助けられた直後に自分を襲った感情の熱波が引いていくにつれて、姿を現したのはひやりとした疑念だった。
クルルギがゼロを捕まえた功績で、ナイトオブラウンズに入ったことを考えるならば、今ルルーシュは憎き宿敵とにこやかに話をしていることになる。
更に、バベルタワーの一件で記憶が戻っていたならば、その直後からロロに銃口を向けるまで、ルルーシュは見事にロロを騙し続けていたことになるのだ。処刑されようとしていた黒の騎士団員の救出作戦後、ロロに向けられた「兄」としての表情が見事な演技である可能性は決して低くない。
そしてもう一つ、ルルーシュを完全には信じきれない要因がある。
確かに、ルルーシュは、身を呈してロロを守った。
だが、死のリスクを冒してまで守りたかったものが、果たしてロロの命だったかのどうかは、疑問が残る。
もし、守りたかったものが、ロロの持つギアスと機情とのつながりだとしたら?
ルルーシュはロロの能力を知っている。バベルタワーでヴィンセント相手に苦戦させられたことも覚えている筈だ。相手が無頼だったということもあるが、黒の騎士団の機体をヴィンセントが次々に破壊したことや、藤堂達を救出後、逃げるルルーシュに対してギアスを数回かけたこともわかっている筈。
ブリタニアを相手にする際、対人・対ナイトメア戦双方で、ロロのギアスが役に立つと判断された可能性は十分ある。そしてロロを足がかりにして機情を掌握出来るというのも大きい。
その為に、ルルーシュがロロを守ったのだとしたら。
だが、そう仮定すると問題がでてくる。ルルーシュがロロを守ったからといって、ロロがルルーシュ側につくとは限らならかった筈。それを考えるならば、ロロの前に飛び出したルルーシュの行動は、ルルーシュにとって、あまりに分の悪い賭けになりはしないか?
「ん?」
「…っ…」
凝視してしまったせいでルルーシュに振り向かれ、ロロは思わず俯いた。
* * *
まだ、完全には陥落していない。ルルーシュは俯くロロを見てそう思った。
ロロは今、ルルーシュを疑っているのだろう。
宿敵である筈のスザクとにこやかに話すルルーシュを見れば、ルルーシュがロロと交わした表情、言葉、感情の全てが演技である可能性を、全く考えないとは思えない。
本当にルルーシュがロロを弟とみなしているのか、否か。ギアス能力と、機情掌握の為に、助けられたのではないか。そろそろ疑い始める頃だ。
しかし、そんなロロの疑念が確信へと変わる要素は既に、殆ど排除されている。
ルルーシュは一度ロロに銃口を向けている。しかしこれは、騙されていたという怒りから我を忘れたとも考えられるし、その後「弟」であるロロを守ったという行為との間に致命的な齟齬を引き起こすものではない。
そしてロロから考えれば、ロロをルルーシュ側につける為に、ルルーシュがロロを守ったにしては、ルルーシュの負うリスクが大きすぎるように見えるだろう。これはルルーシュが言った通り、ルルーシュにとってロロとの一年間の時間がかけがないのものだった、という言葉に信憑性を持たせる。
そう。
ロロはグランストンナイツがギアスにかかっていたことを知らない。そしてロロの過去の映像をルルーシュが目にしていることを知らない。ロロの過去を知ってしまえば、ロケットに対するロロの反応を見ているルルーシュなら、すぐにロロの弱点を見抜く。
これらの事実を知りさえすれば、ロロの疑念は一瞬で確信に至ることだろう。グランストンナイツという保険と、ロロの最大の弱点をルルーシュが掴んでいること。ルルーシュが身を投げ出したのは、決してロロの為なのではなかったのだと、ロロはすぐに気づく。
だが、これらをロロが知ることはない。
問題なのは、ロロが疑念の段階でルルーシュを殺害した方がいいと判断する可能性だ。
まだ、ロロは退路を完全に断たれたわけではない。ロロが本気でブリタニア側に戻ろうと考えるならば、ルルーシュの死体はその手土産になる。
では、ロロにそう判断させない為にはどうすればいいか?
例え負ける可能性があっても、賭ける価値があると判断させる為には、どうすればいいか?
そこはやはり、ロロ最大の弱点を利用するしかない。
* * *
信じたい。でも。
ロロはルルーシュの隣で芋の皮を剥きながら考えていた。
信じるのか、信じないのか。こうやって揺れているぐらいなら、ルルーシュを殺して、本国とコンタクトをとった方がいいのではないか? これまでのイレギュラーは、なんとでも説明することは出来る。今なら、クルルギにルルーシュの死をすぐに確認させることも出来る。
ロロを守ったルルーシュ。
敬語を使うロロに、「兄弟じゃないか」と言ったルルーシュ。
一体、どこまでが演技なのか?
否。クルルギ相手の演技を見る限り、自分がルルーシュの表情を演技かどうか見抜くことは不可能だと考えた方がいい。
ならば、100%信じることが出来ないのであれば、殺すべきではないのか?
殺すのであれば、今しかない。遅くなれば、本国になんの弁解も通用しなくなる。
殺すなら、今。
ロロは慣れた手つきで、素早くナイフを反転させ、持ち替えた。
「ロロ」
「え…」
ルルーシュに言われて、ロロは思わず顔を上げる。
「それじゃ危ないって。…ほら、こうやって。こう持ってさ」
「こ…こう?」
ルルーシュはロロの手に触れて、ナイフの持ち方を直していく。
「手、気をつけろよ」
「…うん…」
ルルーシュの指先の体温を感じながら、ロロは思う。
これが、演技?
演技かもしれない。
…でも。
それでも、僕は。
信じたい。
兄さんを、信じたい。
この一年間の輝きが、未来にも続いていくと、信じたい。
兄さんの隣で、笑っていたい。
本国に戻った所で、自分が欲しいものは決して手に入らない。
ならば、賭ける価値はあるのかもしれない。
ずっと、過去、現在、未来に全く差異のない、生きていても意味のない世界にロロはいた。
自分が死ぬことに対する恐怖を覚えるようになったのは、ルルーシュと出会ってからだ。自分が傷つこうが、死のうが、誰も悲しまない世界。今まで、ロロの死が何かに影響するとすれば、それはギアス能力を持った暗殺者の死という、能力的な損失という点でしかなかった。
ルルーシュは、ロロを個人として見てくれた。
今もこうして、ロロが傷つかないようにと、気を配ってくれている。
ルルーシュと出会って、自分が欲しかったものに気づいてしまった。
もう、気づく前の自分には永遠に戻れない。
ならば例え、負ける可能性が高くても、賭けるべきではないのか。
負けても失うものはない。
勝てれば、欲しいものが手に入る。
悪くない賭けじゃないか、とロロは、賭けチェスをしていたルルーシュの姿を思い出しながら、心の中で微笑んだ。
漣一つ立たなかった自分の心が、これほどに波打っている。
たとえ賭けに敗れるにしても、敗北が確定するその瞬間まで、自分は「生きる」ことが出来る。ルルーシュの傍らで、未来を夢見ることができるなら、それだけでも価値はある。
「兄さん、実は」
ロロは口を開いた。
この道を選ぶのなら、もう揺れていてはいけない。
「僕のギアスには、弱点が…」
信じる。この人を。
何があっても、僕が、兄さんを守る。
ロロはこの時、決めた。
終
戻る
最終関門
信じて、いいのだろうか。
ミルクコーヒーを飲むロロの視線の先には、初夏の陽気の中、生徒会のメンバーと共にクルルギ・スザクと話をするルルーシュの姿があった。
彼を、信じて、いいのだろうか。
ルルーシュに命を助けられた直後に自分を襲った感情の熱波が引いていくにつれて、姿を現したのはひやりとした疑念だった。
クルルギがゼロを捕まえた功績で、ナイトオブラウンズに入ったことを考えるならば、今ルルーシュは憎き宿敵とにこやかに話をしていることになる。
更に、バベルタワーの一件で記憶が戻っていたならば、その直後からロロに銃口を向けるまで、ルルーシュは見事にロロを騙し続けていたことになるのだ。処刑されようとしていた黒の騎士団員の救出作戦後、ロロに向けられた「兄」としての表情が見事な演技である可能性は決して低くない。
そしてもう一つ、ルルーシュを完全には信じきれない要因がある。
確かに、ルルーシュは、身を呈してロロを守った。
だが、死のリスクを冒してまで守りたかったものが、果たしてロロの命だったかのどうかは、疑問が残る。
もし、守りたかったものが、ロロの持つギアスと機情とのつながりだとしたら?
ルルーシュはロロの能力を知っている。バベルタワーでヴィンセント相手に苦戦させられたことも覚えている筈だ。相手が無頼だったということもあるが、黒の騎士団の機体をヴィンセントが次々に破壊したことや、藤堂達を救出後、逃げるルルーシュに対してギアスを数回かけたこともわかっている筈。
ブリタニアを相手にする際、対人・対ナイトメア戦双方で、ロロのギアスが役に立つと判断された可能性は十分ある。そしてロロを足がかりにして機情を掌握出来るというのも大きい。
その為に、ルルーシュがロロを守ったのだとしたら。
だが、そう仮定すると問題がでてくる。ルルーシュがロロを守ったからといって、ロロがルルーシュ側につくとは限らならかった筈。それを考えるならば、ロロの前に飛び出したルルーシュの行動は、ルルーシュにとって、あまりに分の悪い賭けになりはしないか?
「ん?」
「…っ…」
凝視してしまったせいでルルーシュに振り向かれ、ロロは思わず俯いた。
* * *
まだ、完全には陥落していない。ルルーシュは俯くロロを見てそう思った。
ロロは今、ルルーシュを疑っているのだろう。
宿敵である筈のスザクとにこやかに話すルルーシュを見れば、ルルーシュがロロと交わした表情、言葉、感情の全てが演技である可能性を、全く考えないとは思えない。
本当にルルーシュがロロを弟とみなしているのか、否か。ギアス能力と、機情掌握の為に、助けられたのではないか。そろそろ疑い始める頃だ。
しかし、そんなロロの疑念が確信へと変わる要素は既に、殆ど排除されている。
ルルーシュは一度ロロに銃口を向けている。しかしこれは、騙されていたという怒りから我を忘れたとも考えられるし、その後「弟」であるロロを守ったという行為との間に致命的な齟齬を引き起こすものではない。
そしてロロから考えれば、ロロをルルーシュ側につける為に、ルルーシュがロロを守ったにしては、ルルーシュの負うリスクが大きすぎるように見えるだろう。これはルルーシュが言った通り、ルルーシュにとってロロとの一年間の時間がかけがないのものだった、という言葉に信憑性を持たせる。
そう。
ロロはグランストンナイツがギアスにかかっていたことを知らない。そしてロロの過去の映像をルルーシュが目にしていることを知らない。ロロの過去を知ってしまえば、ロケットに対するロロの反応を見ているルルーシュなら、すぐにロロの弱点を見抜く。
これらの事実を知りさえすれば、ロロの疑念は一瞬で確信に至ることだろう。グランストンナイツという保険と、ロロの最大の弱点をルルーシュが掴んでいること。ルルーシュが身を投げ出したのは、決してロロの為なのではなかったのだと、ロロはすぐに気づく。
だが、これらをロロが知ることはない。
問題なのは、ロロが疑念の段階でルルーシュを殺害した方がいいと判断する可能性だ。
まだ、ロロは退路を完全に断たれたわけではない。ロロが本気でブリタニア側に戻ろうと考えるならば、ルルーシュの死体はその手土産になる。
では、ロロにそう判断させない為にはどうすればいいか?
例え負ける可能性があっても、賭ける価値があると判断させる為には、どうすればいいか?
そこはやはり、ロロ最大の弱点を利用するしかない。
* * *
信じたい。でも。
ロロはルルーシュの隣で芋の皮を剥きながら考えていた。
信じるのか、信じないのか。こうやって揺れているぐらいなら、ルルーシュを殺して、本国とコンタクトをとった方がいいのではないか? これまでのイレギュラーは、なんとでも説明することは出来る。今なら、クルルギにルルーシュの死をすぐに確認させることも出来る。
ロロを守ったルルーシュ。
敬語を使うロロに、「兄弟じゃないか」と言ったルルーシュ。
一体、どこまでが演技なのか?
否。クルルギ相手の演技を見る限り、自分がルルーシュの表情を演技かどうか見抜くことは不可能だと考えた方がいい。
ならば、100%信じることが出来ないのであれば、殺すべきではないのか?
殺すのであれば、今しかない。遅くなれば、本国になんの弁解も通用しなくなる。
殺すなら、今。
ロロは慣れた手つきで、素早くナイフを反転させ、持ち替えた。
「ロロ」
「え…」
ルルーシュに言われて、ロロは思わず顔を上げる。
「それじゃ危ないって。…ほら、こうやって。こう持ってさ」
「こ…こう?」
ルルーシュはロロの手に触れて、ナイフの持ち方を直していく。
「手、気をつけろよ」
「…うん…」
ルルーシュの指先の体温を感じながら、ロロは思う。
これが、演技?
演技かもしれない。
…でも。
それでも、僕は。
信じたい。
兄さんを、信じたい。
この一年間の輝きが、未来にも続いていくと、信じたい。
兄さんの隣で、笑っていたい。
本国に戻った所で、自分が欲しいものは決して手に入らない。
ならば、賭ける価値はあるのかもしれない。
ずっと、過去、現在、未来に全く差異のない、生きていても意味のない世界にロロはいた。
自分が死ぬことに対する恐怖を覚えるようになったのは、ルルーシュと出会ってからだ。自分が傷つこうが、死のうが、誰も悲しまない世界。今まで、ロロの死が何かに影響するとすれば、それはギアス能力を持った暗殺者の死という、能力的な損失という点でしかなかった。
ルルーシュは、ロロを個人として見てくれた。
今もこうして、ロロが傷つかないようにと、気を配ってくれている。
ルルーシュと出会って、自分が欲しかったものに気づいてしまった。
もう、気づく前の自分には永遠に戻れない。
ならば例え、負ける可能性が高くても、賭けるべきではないのか。
負けても失うものはない。
勝てれば、欲しいものが手に入る。
悪くない賭けじゃないか、とロロは、賭けチェスをしていたルルーシュの姿を思い出しながら、心の中で微笑んだ。
漣一つ立たなかった自分の心が、これほどに波打っている。
たとえ賭けに敗れるにしても、敗北が確定するその瞬間まで、自分は「生きる」ことが出来る。ルルーシュの傍らで、未来を夢見ることができるなら、それだけでも価値はある。
「兄さん、実は」
ロロは口を開いた。
この道を選ぶのなら、もう揺れていてはいけない。
「僕のギアスには、弱点が…」
信じる。この人を。
何があっても、僕が、兄さんを守る。
ロロはこの時、決めた。
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